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『向日葵の咲く頃には』
食堂広すぎ


そのまま三人で一緒に食堂へ向かった。
オレ達以外にも食堂に向かう人は沢山いて、ちらちらとこちらを見てくる。
そりゃオレの顔に見覚えがないから見てくるのだろうと思ったが、どうやらそれだけじゃない様で、良く耳を澄まして聞いていれば「宇高君の私服可愛いー」とか「岸谷君は今日も格好良い」とかそんな言葉もちらほら聞こえてきた。
どうやら二人は人気者の様で、その証拠に岸谷が苦笑交じりに謝罪してきた。
別に謝罪しなくても良いのにと思ったけど、本当に申し訳なさそうに言うものだから何も言えなくなった。


「ご飯食べながらこの学園の特徴とかの話をするね。知っておいた方が月ヶ瀬も良いだろうし」

「本当?ありがとう、助かる。ドMがいるって事は知ってるんだけど……」

「……何故にピンポイントでそこなん……」

「たまたま……部屋に先客いて……」

「「……あぁ、成程」」


二人が同時に頷いた事に「あぁ……良くある事なのか本当に……」と渇いた笑みで返しといた。
気が付いたら食堂に辿り着いていて、入ってみればそこはどこかの高級ホテルのレストランですかって位に広くて、天井にはシャンデリアがいくつもあってキレイだった。
窓も大きなアーチ型で取り付けられたカーテンは臙脂色のベロア素材のもので、手触りが良さそうな物。
テーブルはそれぞれ六人掛けの物がキレイに並べられていて、聞いた話ではテラス席もあるらしく、昼間とか天気のいい日はそこで食事を摂る生徒もいるとか。
更にその食堂には二階席もあって、そこは一階に比べられない程の、更に豪華な造りになっているらしい。
ただし、その二階席は生徒会役員や風紀委員といった、特別な役員のみ使用出来るらしく、殆んどの一般生徒は二階を詳しく見た事がないそうだ。


「二階に行くにはどっちかの役員になるしかないんだ」

「あとはそのどっちかの恋人になるしか方法あらへん」

「ふーん………ん?!恋人?!」

「せや。この学校じゃ普通やねん」


宇高の発言にびっくりしていれば、更にしれっとした風に言われてしまった。
ちらりと横目で周りを見てみれば、仲の良い普通の男子高校生達が和気藹々と話し合っている風景の中、所々で仲睦まじすぎる組み合わせがいて「あれ?」と聞けば頷かれた。


「さっき言ったこの学園の特徴の一つでね。この学園はエスカレーター式で、中等部や高等部から入る人もいるけど、それもごく僅かで、殆んどが持ち上がりの生徒でね」

「あ、それ理事長に聞いた。あと生徒会と風紀委員が偉いって事とかも」

「そう?なら話が早いや。小さい頃からずっと一緒な上に寮生活でしょ?そんな閉鎖的空間に閉じ込められてる状況は、思春期な男子生徒には自然と恋愛対象が男に向いちゃうんだ。オレや洋平も何人かには好意を向けられてて……」

「あー……。ここ来る前の周りの視線はそれかぁ」

「うん。でもオレ達はまだマシな方でね。生徒会とか偉い役員の人達になるとその規模が大きいし、やる事も凄いんだ」

「好意持つ相手のとっかえひっかえは勿論、親衛隊全員とセフレっちゅう話も出とる。会長はまんま遊びとかそんなん噂や」

「……………セフレ……」

「食い付きよるん、そこなん?」


「変な人やな」と言いながら宇高は注文して何時の間にか届いていた海鮮ピラフを食べ始めた。
オレや岸谷にもそれらは届いて、宇高に続いて口に運ぶ。
因みにオレはオムライスで岸谷は鴨ソバだ。
いやしかし、食い付くのは当然だろう。
セフレだぜ?ぶっちゃけ羨ましいとか思っちゃってるんだよ。
でも生徒会や風紀委員のセフレとか二人の話からして後々面倒な事になりそうだから、そいつらのセフレはご遠慮させて頂くとしても、他の生徒とかでも可能性はある訳だろ?うわー!!超良いな!!あの人達とかもヤっちゃってんのかなー?!あとでバー友に報告しよっと!!
そう思いながら先程見た仲睦まじすぎる組み合わせ達を横目で見て、良いな良いなと思っていれば「まぁでも」と宇高が話し出す。


「生徒会と風紀委員はそれぞれの頭(かしら)がおかしい奴なだけで他のメンバーはまだマシやけど、面倒事に巻き込まれるん嫌ならあんま関わらん方がええ。あと役員とは関係ない輩にも変な奴おるさかい、気ぃ付けや」

「そうなんだ。わかった気を付ける」

「あ、でも月ヶ瀬は役員の一人には会っちゃってるよね」

「え"っ。……うそーん……」

「せやな。さっき"先客おった"っちゅーたやろ?」

「……あの人役員なの?!うそ部屋まで行ったけど気付かなかった!!」

「え?なんで部屋行ったの?……あ、誘われちゃった?」

「ち、ちち違うよ?!(いや違くないけど!!)荷物運ぶの手伝えって言われて行っただけだし……」

「そーなん?でもあの人も手ぇ早いからなぁ。ほんま気ぃ付けや」

「うん……」


まさかの役員だったという事実が衝撃的過ぎて、ちょっと不安になった。
だっていくら知らなかったとはいえ、あんな態度取った訳だし……いや、あれは100%あっちが悪いと思うけど。
もし嫌みとか言われたり突っかかって来られたりしたらどうしようと、凹みながらオムライスをもそもそ食べていれば追い打ちの様に宇高が言った。


「因みに親衛隊っちゅーんは人気者全員に作られている組織みたいなもんで、純粋に相手に好意を向ける奴もおれば、中には崇拝的扱いで好いてる奴の為と言ってえげつない事を他人に平気でする、制裁行動とかもあったりするから、親衛隊にも注意しとき」



……荷物、運んだだけだけど、オレ、卒業まで生きてられるかな……。


2015/6/23.



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あきゅろす。
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