『小虎の恋模様』 1 ジワジワと蝕むような暑さが少し落ち着きをみせ、蓮見学園では文化祭に向けて賑やかになっていた。 少しずつ準備を進めて行く各クラスの中には、色とりどりの紙テープ等で華やかに飾り付けをされている所もある。 各クラスの催し物の雰囲気に合わせてそれぞれが協力し合って完成を目指していた。 小虎のクラスも例外ではなく、事前に出し物を決めた際に決定された催し物の準備を進めている。 「じゃあ今日はサイズ測りまーす!!裏方以外の方はこっち来てくださーい!!」 D組の生徒三人がそれぞれメジャーと測ったサイズを記入する為の用紙を手に並ぶ。 呼びかけに当てはまる数十人の生徒が三人の元へと歩み寄るその中に小虎と草間の姿もあった。 三人の元へとそれぞれ別れて行き、胸部や腹部等の数か所をメジャーで正確に測り記入していく、を繰り返していった。 「はい、賀集君オッケーでーす」 「お、お疲れ様でした」 サイズを測り終えた小虎は身支度を整えて列から外れ、先に終わっていた草間の元へと歩み寄る。 「お疲れ、小虎」 「測られるの、ちょっと緊張しちゃった」 「別にやましい事してる訳じゃねーんだぞ?どこに緊張すんだよ……」 「だってなんかいっぱい測られたよ?」 人によって測る箇所が違うのかな?、そう呟いて小虎はとりあえず納得する。 因みに何故小虎が沢山メジャーを当てられたのかの理由を知る草間は笑いを堪えて、そうなんじゃねぇ?、とテキトウに誤魔化したのだった。 「はい、サイズ確認終わりましたー。いやぁ、作るの楽しみだなぁ!!」 「頑張って作るから皆も期待しててね!!」 サイズを測り終えた残りのメンバーとメジャーを持った三人がクラスの輪に戻って来た。 メジャーを持った三人は、ルンルン♪、と本当に楽しみにしている様子が窺える。 ここまでくれば小虎達が何故身体のサイズを測っていたのか、察しがつくだろう。 小虎達D組の文化祭当日の催しは、手作りの衣装を着て行うものになっているからだ。 裏方以外のメンバーが全員、何かしらの衣装を着て催すもの……つまり、D組ではコスプレ喫茶が行われるのだ。 その際に着る各衣装の担当は既に決まっていて、クラスメート以外の生徒には秘密にしてある。 が、その衣装担当を決めた際に小虎は生徒会の用事で席を外していた為、なんの衣装を着るのか以前に、裏方ではなく接客に回されたという事を後から知ったのだ。 因みに衣装に関しては、前日までのお楽しみ♪、だそうだ。 2016/6/13. [次へ#] [戻る] |