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『小虎の恋模様』
14


裏方にオーダーを伝え、そして注文された紅茶とチーズケーキを持って小虎は姉の待つテーブルへと戻って来た。


「はい、お姉ちゃん」

「ありがとう、小虎。わぁー!!美味しそう!!」


テーブルに並べられた紅茶とチーズケーキに目を輝かせる姉に、周りにいる生徒達はホッコリと心和ませた。
普段、同性しかいないこの学園で過ごす彼等にとって異性がいるというのは、やはり少し違うらしい。
文化祭を見に訪れた一般客の中にも沢山の異性がいる為、何時もと違って学園内は華やいでいた。
その内の一人でもある小虎の姉は、美味しい〜!!、と濃厚でクリーミーなチーズケーキの味をゆっくりと味わい、頬を緩めている。
小虎は、接客担当な為、裏方の手伝いはしていないし、チーズケーキは他のケーキに比べて買ってそのまま、そこにほんの少しホイップクリームとミントを添える程度で提供している物ではあるが、喜んで貰えた事にホッ、と胸を撫で下ろした。
そして何故姉は紀野と巽の座るテーブルに相席しているのかにも、ほんの少しだけ疑問に思って小さく首を傾げたが、それに気付いた者は誰もいなかった。


「賀集君、草間君!!交代の時間だから休憩入って良いよ〜」

「おー、サンキュー」

「小虎はこのあと予定あるの?」

「うん。役員のお仕事でこれから見回りなの。お姉ちゃんは他の教室行くの?」

「そうね、来たからにはうんと楽しむつもりよ。私の事は気にしないでお勤め頑張りなさいね」


小虎の頭を撫でながらそう姉が言えば、コクリと頷く。
しかし、小虎の表情が少し心配そうにしている事に首を傾げて見せれば、ごめんね、と小虎は呟いた。


「一緒に回れたら良かったんだけど……」

「お勤めがあるんだから気にしないの」

「万が一困った事があったら言ってね?無理しないでね?」

「大丈夫よ。何かあったらとりあえずグーで対処しとくから」

「いやその発想もどうかと思うっすよ?」


一通り見守っていた一同であったが、姉の不穏な一言と握り込まれた拳によりツッコミを入れざるをおえなかった草間だったが、周りの一同も同意だったのか、コクコクと頷いていた。
その様子に拳を握ったままクエスチョンマークを飛ばす姉に、お姉ちゃん……、と小さく呟きながら視線を斜め下に向ける小虎であった。
何も起きない、起こさない様に努めるとはいえ、今日は学園の生徒以外に一般人も集まっている。
万が一の出来事が起きてしまう可能性は、普段よりも何倍にもあがる。
そんな中、何かが起きて拳で対処するなど―――ましてや女性一人で―――無茶な話だ。
本当は休憩に入る草間が付き添いたかったが、草間は草間で小虎に付いている様に事前に言われているからそれは出来ない。
大丈夫よ!!、と微笑む姉の心配は拭えないが、それでも気を引き締め直す小虎であった。


2017/3/27.



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あきゅろす。
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