[携帯モード] [URL送信]

『小虎の恋模様』
16


迷子になったまでを話せば巽は、会長君らしいというかなんというか……、と若干呆れた様子で返されてしまった。
それに関しては弁明の余地もない為、小虎は手で顔を覆って隠すのみ。


「迷子になった時はどうやって合流したの?」

「先生が探してくれてたみたいで、それで……あ、でも……」

「でも?」

「あの時、道を聞こうと誰かに声、かけたの。学園にいたから関係者だとは思うんだけど……」


でもボク焦ってたから顔覚えてないの……、そう小虎が肩を落としながら呟いたのを見て巽は、ふむ……、と考える素振りを見せた。


("誰"なのか特定は出来てないけど、薊と会ったって事は覚えてるんだな)


四月に紀野から聞いた内容と、小虎が思い出そうと悩んでいる内容を聞いて巽は、なんとかならんかね……、と呆れた様に溜め息を零した。


「会長君はその"誰か"を思い出したいの?」

「うん……。お礼、言いたいから……」

「……思い出せると良いね」

「……が、頑張るっ」


記憶を呼び起こすのに何を頑張れば良いのかわからないが、小虎はコクリと強く頷いて見せた。
それを見た巽は口角を上げて嬉しそうに笑い、わしゃわしゃと乱暴に小虎の頭を撫で回した。
その拍子に小虎の頭がぐわんぐわんと左右に揺れて、ひぇぇ〜……っ、と情けない悲鳴をあげた事に、外部見学者の生徒と引率の教師は不思議そうに見つめ、首を傾げていた。







その後別れた他のグループとも再び合流し、見学会は無事に終了を迎えた。
見学会も過ぎ、夏休みを家族や草間と過ごし充実した日々を送った小虎は、生徒会の仕事の為に夏休み終了の五日前頃に学園へと戻り、それからの残りの夏休みを学園でのんびりと過ごしたのだった。


第三章 完. 2016/5/12.



[*前へ]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!