[携帯モード] [URL送信]

『小虎の恋模様』
14


補習も無事に終わり、翌日には岩代や寮の管理人に帰省届を渡して小虎は実家へと戻ってきていた。
GW振りに見る家族は相変わらず元気そうで、姉に関しては玄関を開けた途端に抱き締めてくる程。
そんな久し振りの家族と数日を過ごし、草間とも合流して図書館に行ったり、どちらかの家で課題に手を付ける日々を送った。
もうじき七月も終わり、八月に入れば学園見学会が行われる為、小虎は一度学園へと戻らないとならない。
その見学会の際に説明やらなんやらをしなくてはならない為、草間に朗読の確認を取ってもらったりもして、当日に備えたのだった。







―――見学会当日。
見学に来る中学生と引率の教師達が到着する予定の一時間前、生徒会役員及び一部の風紀委員のメンバーは校舎一階の会議室に集まっていた。
この会議室は来客用受付である出入り口に近く、ここで待機していれば見学会参加者の到着にいち早く気付く事が出来るのだ。
そこで集まった役員達は今一度案内の手順等を確認し合っていた。


「事前に知らせた通り参加者を少数に分けて、ほんの少し学園案内と寮案内をする。こちら側の組み合わせは前に言った通り生徒会一人の風紀委員一人のペアで行って貰うからな」


手に持つプリントをパンッ、と叩きながら岩代が改めて言う。
見学範囲は一部だけではあるが、それでも事前に知っておけば慌てないだろうという計らいで行われる。
これに関しては小虎は入学前に体験しているので、この計らいには確かに助けられた。
どういう学園なのか、寮には何が備え付けられているのか、何が必要なのか、それらを事前に知っておくのと知らないとでは大きく違ってくる。
見学案内のペア決めは終業式前に既に発表されていて、小虎は巽とペアになった。
紀野は副委員長と、遠野と綾小路、そして山内は今回選抜された風紀委員のメンバーとそれぞれペアが組まれている。
巽と二人というのは小虎にとっても初めての事だから少し緊張してしまうが、今日の見学会の案内を頑張ろうと気を引き締めた。


「あ、参加者の方々が到着されたようですよ」


窓の外に視線を向けていた綾小路が数人の見慣れぬ姿に気付き、到着した事を全員に伝える。
その言葉に全員が窓の外を見れば、同じ制服に身を包んだ生徒達が数グループと、スーツを着た引率の教師が数人、こちらに向かっている姿が見えた。
岩代が、行くぞ、と全員に声をかけながら会議室を退出すれば、それに全員が続いて会議室は静かになった。


「遠い所ようこそ」

「今日は宜しくお願いします」


校舎を出て岩代がそう言えば、引率教師の内の一人が一歩前に出てお辞儀をする。
それに続く見学会参加者に対して小虎達もお辞儀を返す。


「早速ですが、ここで少しご説明した後に少数グループに別れて改めて案内を致します。賀集、最初の説明宜しくな」

「は、はいっ!!」


サクサク進められ、突然声をかけられて肩を跳ねさせるが、深呼吸を数回繰り返し、小虎は一歩前に出て持っていたプリントを広げて挨拶を含めた簡単な説明を朗読し始めた。
緊張の中、なんとか無事に読み上げ、参加者をグループ分けし、一部の校舎内や寮についての説明案内をそれぞれ開始したのだった。


2016/4/6.



[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!