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『小虎の恋模様』
13


教室を出た三人は共に昇降口に向かった。
その間、会話らしい会話は特になかったが、草間は別にそれでも構わないという感じで、江ノ島も特に話す事はないからと口を噤み、小虎は何か話した方が良いのだろうかと思考を巡らすが、今いるメンバーでの共通の話題等なかなか思い付かず、結局は無言になってしまった、という感じだ。
ただ無言のまま階段を下り、着いた昇降口で上履きから靴に履き替えようとしたところだった。


「お、補習お疲れ」

「ん?おー、巽に紀野。お前らも今帰りかよ」


声をかけられ振り返った草間がそれに応えれば、出てきた名前に反応して江ノ島が、紀野様?!、と慌てて装いを正す。
小虎も紀野の名前が出た事でドキリと胸を高鳴らせながら草間の視線を辿って、目的の人物を見る。
そこにいたのは紀野と巽のみで、他の生徒会役員や風紀委員のメンバーの姿はなかった。
それを少し不思議に思った小虎が首を小さく傾げて見せれば、それにいち早く気付いた紀野が小虎に微笑みかけ、それに小虎が頬を染め上げ、わたわたしている所で話し出した。


「賀集も補習お疲れ様。オレ達少し残って話をしててね、他の役員達は先に帰ったんだ」

「そ、そうなんだ。あ、き、紀野君も巽君もお疲れ様です」

「問題なく無事に終わったからな。お疲れなのはどっちかっていうとお前らだけじゃね?」

「「う"っ……」」


巽がからかう様に言えば、実際その通りな為、否定出来ない小虎と草間は気まずそうに言葉を詰まらせた。
そんな二人をケタケタ笑う巽に対し、紀野は江ノ島の方を見て今度は江ノ島に話しかける。


「江ノ島も補習受けてたんだな。お疲れ様」

「はい!!ありがとうございます!!紀野様もお仕事お疲れ様です!!」


巽様も!!、と付け足す様に江ノ島に言われた巽だが、特に気にした様子もなく、おう、と短く返事を返した。
江ノ島に関しては、まさか補習最終日の帰りに紀野と会えるとは思っていなかった為、凄くテンションが上がっている。
小虎と江ノ島が紀野に会えた事でそれぞれの反応を見せるその姿を見ている草間の視線はまるで黙って見守る親の如く。
その後、何時までも昇降口に留まる訳にもいかないという事で小虎達は他愛もない会話を繰り広げながら寮へと歩き出した。
その五人の姿を校舎の窓から見つめる者がいるという事に気付く事はなかった。


2016/3/7.



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