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『小虎の恋模様』
4


補習三日・四日と順調に続き本日で最終日を迎えた。
補習を受けない日は生徒会室にいた小虎も、そして草間も今日の二教科で終了となる。
重なった一教科は同じもので、同じ教室で受け、その後は小虎は二教科目の教室へ、草間は空いている教室へとそれぞれ別れ、三教科目の時は草間が受ける為、二教科目の時の逆になる、という訳で最終日は空いた時間に生徒会室に行くのではなく、補習で使用されない教室で草間の帰りを待つという事となった。


「次、小虎はB組の教室だったよな?」

「うん」

「オレ教室で待ってっから終わったら来いよー」

「わかった。行ってくるね」


そう言って小虎は二教科目を受けに、草間は一休みする為に普段通っているD組へと、それぞれの教室へと向かった。
小虎がB組へ着いた頃には既に数人の生徒が各々好きな席に座り始まるまで寛いでいた。
補習期間中に同じ教科を受けて馴染みのある顔ぶれや、この時間だけしか見ない顔ぶれもいて、というかD組のクラスメート以外との接点が殆んどない小虎にとってはどこで受けようと緊張ものだ。
目立たない様に後ろの席を適当に選んで腰を落ち着かせてチラリと周りを見回す。
接点がない為、顔と名前を把握している訳でもなく、でも廊下ですれ違ったり何かしらで顔は見た事はあったりする為、あの人もこの人もいる、と心の中で呟いた。
しかし、一部明らかに強面な生徒が見られる辺り、E組の生徒もいる事が伺える。


(……E組さんもちゃんと補習受けてる……偉い。あ、偉いなんて言ったら失礼か……ん?)


ふと窓際の席に視線を流せば見覚えのある後ろ姿が。
その後ろ姿の人物と最後にちゃんと会ったのは梅雨頃のあの日……そう、江ノ島の姿だった。
江ノ島はA組に通う生徒で、この補習期間中にA〜B組の生徒は一人か二人、もしくは全くいない事が多かったので、意外な人物に小虎は目を見開く。
今この教室にいる生徒でA組の生徒は、小虎がわかる範囲では江ノ島のみだ。


(……他の人がどのクラスなのかわかんないだけかもだけど……)


生徒会長を務めている以上……というかそれ以前に同級生の顔と名前とクラス位は認識しておけという話だな、と小虎は小さく溜め息を吐いた。
その時チャイムが鳴り、チャイムと同時に教科担当の教師がやってきて補習開始となった。








終了のチャイムと同時に補習で使用したプリントを回収し、教師は簡単に挨拶を済ませて教室を後にした。
小虎も一息吐いて筆記用具や教科書を片付け、補習終了に喜ぶ生徒や、三教科目を受ける生徒達が会話をしながらゾロゾロと教室を出て行く後に続けて小虎もB組の教室を退室する。
小虎は次の予定はない為、草間の補習が終わるのを待つだけ。
その間に何をしていようかと考えていれば、あっという間にD組に辿り着く。


「草間君、ただいまー」

「おーう。お疲れさーん」


携帯を弄っていた草間が顔を上げて返事をする。
小虎は草間の座る席の前―――つまり自分の席に着き、鞄に教科書類を仕舞い込む。


「草間君は次何組だっけ?」

「なんかさっき知らされたんだけど、移動教室で受けるみたいで向かいの校舎なんだよなー」


面倒くせー、と呟く草間に小虎は、頑張れ、と答える。
ここ蓮見学園は校舎が二棟並んで建てられており、その二棟を渡り廊下で繋げられている形になっている為、普通教室の並ぶ校舎と特別教室の並ぶ校舎と別れている。
本日、草間が受ける三教科目の補習はその特別教室のある校舎で行われる様で、移動しなくてはならない。


「問題は小虎を一人にする事なんだよなー……」


ボソリと呟かれた事に小虎は申し訳なさそうに眉を下げた。


「でもあれから何も起きないし、補習もあと一教科で終わるし、一人でも大丈夫だよ」

「……まぁ、確かにそうだが……」


なかなかに納得しない草間にどうしたものかと考えていれば、教室の入り口に一つの影が差した。


2015/12/5.



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