[携帯モード] [URL送信]

『小虎の恋模様』
3


「いってきまーす」


あれから小虎は姉に服選びを手伝ってもらい―――その際デートとは言わず、お世話になった先輩との約束と告げておいた―――小虎は家族総出で見送られたのだった。
待ち合わせ場所は人で賑わい溢れる駅構内の、場所は時計の付いた柱と相田に指定されている。
駅構内に入り、とりあえず時計を探そうとキョロキョロしていると、人とぶつかりそうになって、少し端の方へ避けてから改めて探す。


「……そういえばこっち方面で良かったのかな?」


今更になって気が付いたが、相田の指定にはどちら方面なのかの指定はなかった。
今小虎がいるのは東口方面の駅構内なのだが、もしかしたら反対方面の可能性もある。
連絡を取りたいが生憎アドレス交換をしていないので―――学園内にいる間は特に不便もなく過ごしていた為―――着いた事も知らせる事が出来ない。
どうしようと悩んでいれば、今いる駅構内で時計の付いた柱を見付けているかどうか確認に近付いてみる。
柱には数人の人が寄りかかっていて、ジロジロ見るのも申し訳ないと思いつつ、一人一人確認してみれば、その内の一人が小虎の視線に気付き、小さく手招いた。


「……?……あっ」


手招いた人物を不思議に思いながら自分の周りを見回して、呼ばれているのが自分である事に気付き、更に良く確認して見ればその人物が相田である事に気付いた。
無事に会えて良かった、と小虎は安堵の胸を撫で下ろす。
通行人に注意しながら相田の傍に寄れば、よぉ、と挨拶をされる。


「お、おはようございます。こっちで合ってたんですね」

「それオレも思った。まぁ時間過ぎてもオレここから動く気ないけどよ」

「えっ、さ、探してくれたり……しないんですか?」

「それはオレの役目じゃねぇ。お前の務め。オレはそれを見てるだけ」

「そ、そんな……酷いですよ……」


あうう……、と項垂れる小虎に対して相田は、あっははは!!、と大笑いする。
確かに先輩と待ち合わせで後輩の自分が動くのも当たり前なのかもしれないけれど、そう思う反面どこかで納得いかないという気持ちもある小虎だった。
そんな膨れっ面をする小虎に、機嫌直せよ、と相田は小虎の頭をガシガシと撫でる。
そんな時、小虎の耳に周りの女性の声が届いた。


「見て。あの人格好良くない?」

「うん格好良い!!高校生か大学生位?」

「小っちゃい子は連れの子かな。声かけてみる?」


キャッキャッ、と数人の声が聞こえて改めて相田の姿を見れば、黒のジャケットに鎖骨が大胆に見える白いシャツ、紺色のジーパンに編上げのブーツ。
ウエスト部分にはチェーンがぶら下げられており、容姿にあった格好良い服装をしている。
姉に選んで貰ったとはいえ、小虎の持っている服の中から選ばれた洋服と比べるとその差は一目瞭然。
なんだか申し訳なく思い、小虎は相田との距離を少しとる。


「……?なんだよ」

「え"っ。いえ、その……」

「まぁ良いか。んじゃ、行くか」

「あ、はい」


気にした様子のない相田が先に歩き出した為、小虎もそれに遅れない様に付いて行った。



2015/6/12.


[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!