『小虎の恋模様』
2
―――翌日。
小虎は予定通り家に帰ってきていた。
家では、GWで仕事休みの父親と、丁度買い物から戻って来たばかりの母親と、大学生の姉が小虎を迎え入れる。
「お帰り小虎。春休み振りね」
「ただいま、お母さん。お父さんもお姉ちゃんも」
「お帰り〜」
「風邪とか引いてないか?」
心配する父親に、大丈夫だよ、と答えてから自室に荷物を置きに二階へ上がる。
その後ろを姉がこっそり付いて来ている事など気が付かない小虎は、明日着ていく服を選びだす。
「うーん……。どうしよう……」
「な・に・が?」
「う、わわわッ!!お、お姉ちゃん?!」
「どうしちゃったのよ、小虎。クローゼットの中見て悩むなんて。彼女でも出来たの?」
「か、かの……?!ち、違うよ!!全然!!」
「それもそうよねー。あんたん所、男子校だもんね」
あっても彼氏よねー、なんて冗談めいた言い方をする姉に対し、小虎はドキリとする。
実はその男子校で好きな人が出来て、しかも明日は別の男性とご褒美という名目のデート―――小虎自身は頑なに買い物だと言い張る―――をするのだ、なんて口が裂けても言えない。
クローゼットに並ぶ服を見て悩んでいた事を見られてしまった以上、どう誤魔化そうか小虎は必死に考えた。
「あ、明日出かける予定があって」
「え、出かけるの?明日には帰っちゃうんでしょ?」
「うん。でも明日はその……少し前から約束してて」
「えー、お姉ちゃん小虎と一緒に遊びたかったのに。今日は家にいる?」
「うん、今日はゴロゴロする予定だよ」
「う〜ん……約束してるなら仕方ないかぁ。じゃあ今日はお姉ちゃんとゴロゴロしよ!!」
小虎が生まれた時から小虎にべったりな姉は、小虎の手を握りながら言う。
それに頷いて見せれば、やったぁ!!、と喜んではしゃぐ姿を見て小虎は微笑む。
姉が小虎を必要以上に構ったり甘やかしてくれたりするのを小虎も嬉しく思っているので、姉と過ごすのが好きな小虎にとってもこのGWは楽しみにしていたのだ。
一先ず洋服選びをやめて居間に向かい、久し振りの両親との会話も弾み、その日はのんびりと過ごした。
2015/6/5.
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