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『小虎の恋模様』
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「え?明後日、相田さんとデートすんの?」

「で、デートなんて言い方やめてよ……。ただお買い物に付き合うだけだよ……」

「それをデートと言うのではないのかな?小虎君」

「い、言わない……でしょ?だってお付き合いしてる訳じゃないもの」

「まぁ、それもそうだ」


新歓が無事に終わって月日も変わり、ただ今GW真っ最中。
小虎は、GWに入る前に相田に呼び出されて一位景品の約束である内容を言い伝えられていた。
それは、GW最終日にデートをするという内容だ。
景品だし、頷いてしまったからには行かない訳にもいかないし、買い物に付き合ってくれれば良いから、と言われたのでそれに了承した。
小虎もGW中に一度家に帰ろうと考えていたので、前日に家に帰ってから駅での待ち合わせの予定となっている。


「なんか先輩、凄く嬉しそうだったけど、本当にボクなんかで良いのかな……?」

「名目上、生徒会長からのご褒美だからな。どんなに嫌でも小虎が行く事には変わんねぇだろ」

「そうだけど……。だって綾小路先輩が言ってたもん。相田先輩はモテるって」

「つまりモテる相手がどうして自分なんかとわざわざデートする必要があるのだ、と?」

「うん」


草間の部屋に相談をしに来た小虎はソファに置かれた柔らかい素材のクッションをギュッ、と抱き込む。
先程述べた通り、相田は前年度の生徒会長を務める程の人望も人気もある生徒。
小虎が一年次の時にも告白だのなんだのの噂も耳にしてあるし、更に綾小路の発言からしてその噂話は確信のあるものとなった。
そんな人物が、自分みたいな周りに認められていない、こんな駄目な奴なんかと何故デートを望むのか、小虎にはそれがいまいちわからなかった。


「まぁ、ご所望されてるんだから仕方ないさ。明日家帰んだろ?楽しんで来いよ」

「うん。……楽しめるかなぁ?先輩……」


とことん不安しかない小虎だった。
時間も遅くなって草間の部屋を出て自室に戻る際に、生徒会役員の全員に家に帰る事を伝えようと、それぞれの部屋に向かう。
山内は役員でも補佐な為、部屋は役員専用フロアではなく一般生徒部屋の方なので伝えず、綾小路は既に帰省中でGW最終日の昼に戻るらしく、遠野と紀野にしか伝える人はいない。
遠野の部屋に行き、インターフォンを鳴らすが返事が一向に返ってこない。
もう一度鳴らしてみるがそれもまた結果は同じで、別室にでも行っているのかな?、と小虎は遠野の部屋の前から去る。
続いて紀野の部屋の前に行き、緊張の余りインターフォンを押す指先が震えた。
深呼吸を繰り返して、騒ぐ心臓に落ち着くよう訴えかけて、震える指のままカチリと押せば、部屋の中でピンポーンと音が聞こえた。
ドキドキと待っていれば、中から声と足音が聞こえてきて、更に心臓がバクバクと速まる。


「だれ……」

「あの。こ、こ今晩は……」

「賀集?どうかしたの?」

「あ、あの。ボク、明日……お家に帰って、明後日の夕方頃……戻ってくる予定で。そ、それ、お知らせに……」

「そっか。一度帰るんだね。遠野にも伝えた?」

「ううん……遠野君、いなかった……から」

「わかった。遠野にはオレから伝えとく。賀集帰っちゃうんだ。そっか……ちょっと寂しいな」

「えっ、あ、え……と……」


寂しいと言う紀野の表情は、本当に寂しがる様に眉を下げたもので、小虎はドキリと心臓を高鳴らせる。
真っ赤な顔であわあわと慌てていれば、クスリと紀野が笑う。


「困らせてごめんね。大丈夫、寂しくても少し我慢すればまた会えるものね」

「う、うん。そ、だね」


優しく微笑む紀野を見て、小虎もつめていた息をホッ、と吐く。
仲良くしたい、そう言われたがここまで寂しがってくれるとは思いもしなかった小虎は嬉しく思い、緩む口元に気付かれぬ様、俯き加減に小虎は返事をする。
これ以上の長居をするのも悪い為、小虎は短く挨拶をして隣の自室に戻った。
その日はもうお風呂に入って寝るだけなので、小虎は入浴の準備をする為に着替えを取りに行った。



2015/6/5.


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あきゅろす。
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