『小虎の恋模様』
17
視線を受けながらも、なんとか生徒会室に辿り着き、そこから生徒会室と風紀委員室の間にある会議室へと全員が集合した。
生徒会役員は補佐である山内を含めた全員と、風紀委員は委員長と副委員長、そして数人の委員が集まっている。
「んじゃ会長君。始めよっか」
「あ……う、うん」
一通りメンバーの顔を見て巽が小虎に同意を求める。
初めに今日の歓迎会の感想や、お互い労いの言葉を交わしていく。
少し和んだ空気の中、次は反省点や何か問題がなかったかの報告に入る。
話を進めていくと、無理に追い掛け回して怪我を負わせた者がいただとか、脅すなどしてズルをしようとした者がいたから注意したとか、決して良い終わり方をした訳ではない様子。
勿論その中には小虎が遭遇した事も含まれる為、現場に向かった巽がその事を上げた。
「えっ。賀集、大丈夫だったのー?」
「う、うん……。相田先輩が偶然、通りかかって……」
「相田さんは相手を"吉野"って呼んでました」
「吉野……ですか。彼はC組だからあまり接点はないですが、今までに目立つ様な問題を起こした報告はありませんね……」
「一年生も会長君が止めてくれたおかげで未遂だったし。良かったっちゃあ、良かったんだが」
「いや、巽先輩。結果的にはあまり良くはないんじゃ……?」
「大事にならなくて、って意味だって」
小虎が接触した吉野の事で話が進む会議室。
巽の言う通り大事にはならずに済んだが、その時受けた恐怖心は確かなもので、小虎は話を聞きながらその時の事を思い出してブルリと身体を震わせた。
それに気付いたのはこの会議室では紀野だけで、他のメンバーは今後吉野の行動に注意したり、歓迎会の後の行事についての話し合いに移っていた。
会議での内容は一通り話がついて今日はこれでお開きとなった。
会議室を出る前に、賀集も気を付けるんだよー?、と遠野に言われて小虎は頷く。
話し合いの中で、今回の事で吉野がまた接触してくるかもしれないという結果になり、それで遠野は声をかけてくれたのだ。
小虎はその優しさに心が落ち着いた。
風紀委員達は報告書を作る為に風紀委員室へ向かい、生徒会は仕事が全て片付いた訳ではないが今日は残らずそのまま帰宅となる。
遠野は近くまで迎えに来ていた生徒と寮へ、綾小路と山内は一度教室に行くと言ってそれぞれ階段の所で別れた。
残った小虎と紀野は、見送った後暫くその場に立ち尽くす。
小虎が、どうしようかと悩みながらチラリと横目に紀野を見れば、紀野も小虎を見ていた様でパチリと目が合う。
なんだかこういった状況が最近は良く起きるなぁ、と心臓の鼓動が速くなるのを感じながら小虎は思った。
「帰ろうか」
「え、あ……う、うん」
ニコリと微笑みながら紀野が昇降口近くの階段を下り、小虎は慌てて追いかける。
静かな校舎の中に二人分の足音が響いた。
2015/5/20.
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