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『小虎の恋模様』
15


新入生歓迎会も閉会を迎え、それぞれは教室へと戻って行った。
この後はSHRを受けるだけなので、皆帰り支度をする。
生徒会や風紀委員会は歓迎会中に何かあったかの報告をする為にまだ残らないといけない。
小虎は役員挨拶等が終わった後、草間と一緒に教室へ向かっていた。


「しっかし、相田さんの要求ってなんだろうな?」

「……ボクなんかで出来る事なら良いんだけど……」

「なーんか勿体ぶる所が怪しいよな」

「……怪しいって何が?」


席が前後な為ヒソヒソ話で先程の話題をする小虎と草間。
内緒話でするのは小虎に気を使っての行動で、小虎はぼんやりとだがその優しさに気付く。
本当にどうしてあんな景品内容なのか……、そう溜め息交じりに言う小虎に対して草間は、ま!!頑張れよ♪、とどこか楽しそうに言う。


「他人事だからって」

「実際に他人事だしな。手を貸したい所だけど、相手が相田さんだしな……」

「相田先輩じゃなかったら手伝ってくれてたの?」

「無理矢理にでもな。あ、でも紀野の場合も無理だな。オレはまだ死にたくない」

「は?!な、なななんでそこで紀野君が出て来るの?!紀野君こそボクにお願いする事なんてないよ!!」

「……お前の目は節穴か……。眼科行け」

「酷い言われよう!!」


憐れんだ瞳を向けられて若干の涙目な小虎は、もう良いよと言わんばかりにそっぽうを向いた。
丁度そのタイミングで担任が教室に入って来た為、SHRが行われた。





「では皆さん、また明日」


簡単に話を済ませてSHRは終わった。
担任が教室を出る頃には教室内もガヤガヤと騒ぎ出し、帰宅する生徒達が出入り口に向かって行く。
小虎は放課後の集まりに行く為に席を立ち上がった。


「んじゃ、オレ帰るわ。また夕飯にな」

「うん、またね」

「なんかあったらメールしろよ〜」

「……?なんかって……何?」

「なんかはなんかだよ……って、ん?」


ガヤガヤと騒がしい教室の、正確には出入り口が先程よりも騒がしくなっていた事に草間は気付いた。
その様子に小虎もそちらを見れば、出入り口付近にいたであろう生徒達が左右に分かれて道を開けていた。
数人の生徒達がきゃあきゃあと騒いでいる事から誰かが来たのだろうと推測出来る。


「悪いけど、ちょっと通してもらえる?」

「は、はははいッ……!!」


そこから聞こえた声に小虎の心臓がドキリと跳ねる。
姿を現したのは、やはり紀野だった。
良く見れば廊下には巽の姿もあり、巽に視線を送る生徒もいた。


「小虎、紀野と約束してたん?」

「え?う、ううん?ボクじゃないんじゃ……」

「賀集、もう役員会議に行ける?」

「へっ?!あ、う、うん!!行ける……けど……え?」

「あ、ごめん。勝手に迎えに来ちゃった。迷惑だった?」


真っ直ぐ小虎へと足を運んだ紀野に、小虎は頬を染めながら慌てて答えた。
が、約束も何もしていないのに、どうして来たのかと不思議に思っていれば、紀野は眉を下げて申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした。
確かに約束はしてはいないが、だからといって謝れる理由はない為、小虎はブンブンと手を振りながら答える。


「えっ?!そ、そんな……!!迷惑とかじゃ、なくて!!あの、び、びっくりはした、けど!!あの、その……あ、ありがとう……?」


最後の方はこれで良いのか不安だという声音になってしまったが、困ってはいない事とお礼を告げれば、紀野はキョトリとした後、ふわりと嬉しそうに微笑みながら言った。


「そう……良かった。会議、一緒に行こう」


何度か見たけど至近距離での紀野の笑顔はまだまだ慣れない小虎は、真っ赤になりながらコクコクと頷いた。


2015/5/12.



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