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『小虎の恋模様』
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小虎含めて生徒会役員全員と岩代がステージに並び、確認した遠野が再び口を開く。


「選ばれた上位五名の方々への景品発表に入りまーす。まず五位の田中君には、学食高額メニューの半額券一週間分〜!!」

「はい!!ありがとうございます!!」


遠野がそう言えば五位の田中は頬を染めつつ、岩代から半額券を受け取る。
受け取る際も岩代を見て顔を赤らめていた。
田中が下がったのを見て遠野が、続いてー、と続ける。


「四位の水町センパイには学食無料券一ヶ月分で〜す!!」

「おっしゃあ!!」


綾小路から渡された無料券を掲げて喜びを体育館にいる生徒全員に見せ付ける。


「三位の松田センパイには生徒会役員との記念撮影券〜!!これは後日撮影という事でー、希望の場所とかをあとで岩代センセに伝えといてくださいねー」

「光栄です!!一生の宝物にします!!」


涙目で喜ぶ松田に会場からは、良いなー!!、羨ましー!!、といった言葉が飛び交った。
小虎に関しては、景品が無料券なのは良いが写真とかで良いのだろうか、と思ったがこの喜び様を見て、大丈夫なんだな、と安心した。
だが、景品はあと二種となったが、その内一位の景品の内容を遠野と岩代の二人以外、実は知らされていない。


「続いて二位の水戸君には生徒会の中から一人選んでその人の私物を一つ貰っちゃおう券〜!!さあ!!誰の何が欲しいかな〜?!」

「ほ、本当ですか?!超嬉しいです……!!じゃ、じゃあ紀野さんの使用済みのタオルを!!」

「………………」


はしゃぎながら要求する水戸を見て紀野を盗み見すれば、指名された当の本人は無言で冷めた目をしていた。
小虎は大丈夫だろうかと心配したが隣から、……了解した、と嫌々了承する紀野を見てつめてた息をホッ、と吐き出す。
内心、ちょっと羨ましいな……、と思っていた事は内緒だ。
さぁ、残るは!!、と遠野が一層声を張って進行を進めた。


「一位獲得は、前生徒会長を務めてました相田センパイで〜す!!センパイにはなんと現生徒会長、賀集 小虎になんでもお願い券が贈呈されま〜す!!」

「…………………え?」


テンションの高い遠野の発表に最初に反応したのは小虎本人だった。
周りの生徒達を見れば小虎と同じく、……え?、と不思議そうな表情をしていた。


「なんでもお願い券、ねぇ……」

「は〜い。なんでもですよ〜」

「え?え、えぇ?!あ、あああのっ」


真剣に考え始める相田を見て小虎は慌てて遠野につめ寄る。


「待って!!あの、ボク聞いてな……」

「あぁ、これオレと岩代センセで決めたの〜。一位の人にはやっぱ会長からのご褒美が良いだろって」

「そそそんな……。ぼ、ボクから何か、されたって……う、嬉しくないと思……」

「うん、決まった」

「ひぇっ?!」


内容の変更を希望しようとしたら相田がお願い事を決めたらしく口を開く。
一応、会長職に正式に就く前にお世話になった先輩とはいえ、何をお願いされるかわからなくて小虎は若干涙目になりながら身構えた。


「んな身構えんなって。簡単なお願いだし」

「………………な、ななんでしょ……?」

「今度オレの要求に絶対に"Yes"で答える事」

「……は、え?」


相田の発言に小虎だけではなく、体育館にいる全員が目を丸くする。
生徒会役員のメンバー達も意味がわからないといった表情で相田を見るが、紀野だけは相田の事を睨みつけていた。
その視線に気付いた相田は、紀野にニヤリと不敵な笑みを一瞬だけ向け、再び小虎へと向く。
小虎は発言内容を頭の中で反芻するのでいっぱいで固まってしまっている。


「内容とかは追々伝えるとして、どんな内容だとしてもお前はそれを絶対に優先させる事。良いな?」

「……へ?あ、え?……は、い……ん?」

「大丈夫か?お前」

「あ、だ、だだ大丈夫……です。あの、本当にそれで……?」

「あぁ、これで良い。じゃあ、約束な」


スッ、と出された小指に、指切りをするのだと理解したが、生徒達のざわめきで小虎は戸惑う。
じれったくなった相田は、小虎の手を取り小指を自分の小指と絡ませた。
絡まった小指同士がユラユラと揺らされて、あわあわと焦っている小虎に相田は目を細めて笑いかける。


「約束な」

「……ッ、は、はい……」


あまり見せない相田の笑みに小虎だけではなく体育館にいた人間全員が驚きに包まれ悲鳴に近い声が響く中、顔を真っ赤にして倒れる生徒もチラホラいたとか。


2015/5/4.



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