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『小虎の恋模様』
13


『終了時間になったぞー。オニ役の奴も逃げきった奴も全員体育館に戻って来るように。オニ役の奴は、捕獲数の確認するから、体育館に来たら入口右手に向かえー』


岩代のテキトウな終了の合図と同時に小虎と紀野は見回りの手を止める。
無事に終わった事にホッ、と息を吐く。
体育館に向かう生徒たちに並んで二人も歩いていれば、後方から小虎の肩がポンと叩かれ、小虎は大げさな位ビクリと肩を跳ねらす。


「よ、小虎!!お前どこ隠れてたんだ?」

「……ッ……く、草間君。理科室にいたんだけど……」

「理科室かー……全く別の方行ってたわ。つかお前捕まってんじゃん」

「あ……うん。いろいろ……ありまして……」

「?」


小虎の肩を叩いたのは草間で、スタート前ぶりの再会に少し安心した。
捕まった経緯を話さず言えば、怪訝な顔をされてしまった。
草間が隣にいる紀野に目を向ければ、紀野は意図を読み取ったのか、困った様に眉を下げて、いろいろだよ、と小虎と同じ事を呟いた。


「紀野も捕まってんじゃん。なんか意外」

「巽君に捕まったらしいよ」

「おー……風紀委員長にか。あの人、足早ぇもんな。ドンマイ」

「走らずとバッタリ会って捕まったけどね」

「尚ドンマイ!!」


あははっ、と草間は豪快に笑った。
体育館に着いてオニ役の草間とは一旦別れて、小虎達はステージの方に向かう。
そこには既に到着していた遠野と綾小路、そして風紀副委員長の姿があった。


「あとは山内クンと巽が来ればミーティング出来るね〜」


やっと終わったよー、と伸びをしながら遠野が言う。
その遠野にはオニに捕まった後に渡されるシールが見当たらなかった。


「遠野君、オニに……捕まらなかったんだ」

「んー?まぁそりゃ逃げるの面倒くさくてもやるからには全力で、がモットーだし?ヤる時もヤるし〜、オレ」

「……やるときも?」

「賀集、気にしなくて良いんですよ。遠野も昼間から変な事を言わないように」

「はーい」


感心した小虎に不穏な発言をする遠野、そしてそれを注意する綾小路の元に、山内と巽が僅差でやって来た。
とりあえず集計結果が出るまで小虎達は挨拶文の確認と、ご褒美の確認を済まし、三十分程経ってから集計結果が役員達の手に渡された。


「ただ今より結果発表及び景品授与を始めます」


響き渡る綾小路の声に体育館にいた者全員がソワソワとざわめき始める。
まず始めに、オニ役の捕獲数上位者の結果発表から。
これは集計結果により上位五名の生徒が名前を呼ばれてステージに上がり、その時一緒に景品発表もされる。
上位者の名前を発表する為に遠野がステージに上がる。


「では発表しまーす。名前を呼ばれた人は、ステージまで来てくださーい。では五位の人―――……」


次々に名前を読みあげて、呼ばれた生徒はステージに上がる。
名前を呼ばれた時、歓喜の声が響き、楽しんでもらえたのだと小虎は実感した。
そう思っている内にいよいよ一位の発表とまで来ていた。


「次に一位の人―――……三年、相田 雅也センパイ!!」


良く知る名前が呼ばれて生徒達の方へ視線を向ければ、呼ばれた相田がステージに上がった。
流石は元会長様ー!!、ステキー!!、等といった歓声を送られ、答える様に手を振っている。


「以上ー。おめでとうございます!!今回残念ながら呼ばれなかったオニ役の皆さんもお疲れ様でした〜」


ニッコリと笑いながらそう言ってお辞儀をする遠野に雄々しい声がワッ、と湧き上がる。
地響きが起きたのではと思う程の声量で若干耳を塞ぎたくなった小虎だが、頑張って耐えた。
続いて景品発表に移る為、生徒会役員と岩代がステージに上がった。


2015/5/4.



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