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『小虎の恋模様』
9


生徒会役員が全員逃げる側な為、オニ役のスタート合図は岩代に頼んで、逃げる側の生徒が順番に体育館から外へ出て行く。
出る際に、オニ役の中にいる草間と偶然にも目が合い、手を振られたので振り返せば草間の周りの生徒がザワッ、と騒ぎ出す。
何?どうしたの?、そう思って小虎が首を傾げてみれば今度は皆突然顔が青ざめた。
バッ、と顔も背けられて、なんだろう?、と思った時、草間がジェスチャーで自分の後ろを指さしていた。


(……後ろ?)


指示された通り後ろを振り向けば、そこには何時の間にか紀野がいた。
小虎はびっくりして身体ごと横にずらせば、そこにいた他の生徒にぶつかってしまい、慌てて謝罪する。


「大丈夫?」

「へっ?!あ、う、うん!!ダイジョブデス!!」


すぐ傍にいる紀野にドキドキしながら答えれば、良かった、って微笑まれた。
至近距離の出来事に、まともに顔が見れないので出入り口の方に身体ごと向けて心臓を落ち着かせる。
そういえば、と紀野が話し出す。


「さっきのルール説明、お疲れ様。頑張ったね」

「えっ、あ、ありがと……」


好きな人から褒められてニヤけそうになる口元を頬ごと掌で隠すように包んで押さえる。
へにゃへにゃと顔を緩めていればポンッ、と頭に重みがきた。
頬を押さえたまま隣を見れば案の定頭への重みは紀野の掌で、小虎の頭を優しく撫でていた。


「苦手を乗り越えて頑張った賀集にご褒美」

「―――――――……ッ!!!!」


まさかの頭ナデナデのご褒美を貰って小虎はボンッ、と音が出る勢いで顔を真っ赤に染める。
熱で頭がフラフラして足元覚束なくなって、本当に倒れそうになった所を紀野が支える。
それは今の小虎には逆効果の行動で、腰が抜けてヘタリ……、と座り込んでしまった。
周りの生徒もオニ役の人達もなんだと様子を窺ってきているけど、今は皆見ないで欲しい……、と切に願う小虎だった。
視界の片隅でまた草間が手を振っていた気がした。

逃げる側の生徒が体育館から出た所で、中ではカウントが始まった。
さてどこに行こうかな?、と辺りを見回すと周りも同じ考えの人が沢山いる。
とりあえず外は逃げ場所広いから目に付きやすいだろうし、という事で小虎は校舎の中に行く事にした。
バタバタと足音があちこちに響く。
一般教室等は入れないからとりあえず廊下をうろついて、どこの教室に入るか考える。
逃げるというよりは明らかに隠れて様子を見る作戦はもはや隠れんぼの域だ。
草間に見つかりやすい所はどこか、そう考えていたその時、校舎内に備え付けられているスピーカーから電子音が鳴り響いた。


『30秒経過した。これよりオニ役の生徒達がスタートするからお前ら頑張って逃げろよー』


なんとも適当な岩代のスタート宣言が流れて、小虎の緊張が増加した。


2015/4/25.



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あきゅろす。
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