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『小虎の恋模様』
4 Side 紀野


生徒会と風紀委員会の挨拶が終わり、これで本当に入学式はお開きとなった。
新入生がゾロゾロと出入り口へ向かう最中もオレたちを見て何か言っている。
まぁ、こうなる事は始めからわかっていた事だ。
何故オレが副会長で、賀集が会長、遠野が会計かと言うと遡る事冬休みの投票集計結果を知らされた時。








「オレ"支えられる"よりも"支えたい"派なんです」


そう突然切り出したオレに、生徒会室にいる全員が呆けた顔をする。
会長が、どういう意味かを訪ねてきたのでオレはそれに、提案なんですが、と進めた。


「オレが会長じゃなくて、賀集を会長にしたいんです」

「「「……はぁ?」」」


見事にハモった。
唯一、賀集だけ固まってて反応がない。


「……いやいやいや!!紀野、何言ってんだ?」

「ですから、賀集を生徒会長に……」

「無理に決まってんじゃーん。見たでしょ?会計ってだけでも最初の嫌がりっぷりー」


慌てた岩代先生から質問を受けて、同じ返事を返せば、呆れたような遠野が即否定してくる。
改めて賀集を見れば顔を真っ青にしながら恐らく頭の中でオレの発言を整理して理解しようとしているのだろう。


「確かに賀集にしてみれば迷惑な話だとは思うけど、でもこれは賀集のためでもあるんです」

「……どういう意味だい?」


今度は副会長がオレに訪ね、同意見の人達が説明を求め催促する視線を向けてくる。


「本人も言っている通り、賀集は人前に出るのが苦手なんでしょうが、でもこのままじゃ駄目だと思うんです」

「何がだ?」

「将来的に、です」


チラリと賀集を見れば、どういう事だという表情で首を傾げていた。
それを見て、可愛いなぁ、なんて自然と唇が緩む。
……あ、賀集の顔に赤みが増した。小さく息をのむ音もした。本当、可愛い。


「高校に通ってる今は問題なくても卒業後、大学に進学するにしても社会に出るにしても、その時は必ず来ます。社会に出るなら尚更人前に出たり、今よりももっと沢山の人との関わりがある。そんな時に"人見知りだから"で見逃してもらえるとは思えません」

「……つまり、今の内から人前に出て発言する事に慣れ、人見知りも克服しとこう、ってところか?」

「そんなところです。そしてこれはほぼ無理矢理やらせるのと同意です。だからオレはその責任、という程ではないですが、その支えをオレはしたいんです」


そう伝えれば、周りは思案し、そこでパンッ、と音が鳴る。
音の発生元に目をやれば、賀集の近くにいた岩代先生の手を叩く音だった。


「賀集を思ってのその考えも理解出来るし、一理ある。どうだ?ここは一つ、紀野の提案とやらにノってみねぇか?」

「え"っ?!……せ、せせ先生?!」

「……確かに。そう言われたらそれが良い、と頷けますね」

「ふふ副会長さんまで?!」


うんうん、と一同頷く様子を見届けて、賛成の同意を貰えた。
賀集には悪いとは思うけど、賀集のためっていうのも勿論本音だが、賀集が人前で頑張る姿を見て誉めたり、失敗した時には慰めたりと、陰ながら支えたい、側にいたいという私利私欲からくるものだ。
そのオレの我が儘に巻き込む事を許して欲しい、そう思いを込めて賀集の名を呼ぶ。


「大丈夫。オレは全力で賀集をサポートするから。やってみない?」

「っ……、えっと……」

「賀集なら出来るよ」

「………ッ、ぅん……」


悩みに悩んだ結果、賀集は視線をさ迷わせながらコクリと頷いてくれた。
それにホッ、と息ついて、ありがとう、とお礼を言えば音が出る勢いで賀集の顔が赤く染め上がった。


「じゃあ、賀集が生徒会長なら会計は紀野って事で良いのか?」

「あ。センセ、ちょい待って」


確認の為に岩代先生が呟けば、すかさず今度は遠野が挙手をする。
今度はダランとソファに座る遠野に全員の視線が向く。


「賀集が役員チェンジすんならオレもチェンジ希望しまーす」

「遠野もか?」

「だぁって、流石に”抱かれたい人No.1”より立場が上ってやりづらいもーん」

「あー?……それもそうか」


オレの方を指しながら、副会長と会計チェンジ!!、の提案をここにいる全員が認め、結果的に生徒会長は賀集、副会長はオレ、会計は遠野、書記は持ち上がりの綾小路先輩の形に収まった。
あとは新入生の内の誰かが補佐役として一人入って新しい生徒会の完成、という事となったのだ。


2015/4/17.



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あきゅろす。
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