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『小虎の恋模様』
2


講堂内では新入生たちの賑わう声が響いていた。
ザワザワと落ち着きを見せない中、ステージ近くでは一部の教師陣と一部の生徒―――生徒会と風紀委員会が段取りの最終チェックをしている。
因みに在校生の始業式は入学式の前日に済ませてあり、教室で自習をしている。
生徒会役員と風紀委員会にはそれぞれの仕事量やらを考えて、授業への出席免除を与えられてはいる。
とはいえ全く出なくていい訳ではないので、本当に忙しい時だけ利用させてもらう形だ。


「薊連れて来ましたー」

「おっし、揃ったな。んじゃぼちぼち始めるか」


紀野と巽が集合すれば、前年度より引き続き生徒会顧問の教師、岩代 知也(イワシロ トモヤ)が進行するように声をかける。
前年度より唯一持ち上がりで、前会計・現書記である三年生の綾小路 旭(アヤノコウジ アサヒ)が、講堂内にいる生徒に静かにする様にとその落ち着いた声音をマイクに乗せ響かせる。
ザワザワしていた講堂内は徐々に静まり、それを合図に綾小路は続けて話出す。


「ただ今より入学式を行います」


その挨拶により入学式が始まった。




―――入学式が始まって数時間。
理事長の話や、来賓の祝辞、新入生代表の挨拶など長々とした時間が流れ、始めこそピシッ、と背筋を伸ばして聞いていた新入生だったがその長さに疲れを感じ、肩の力を抜いていく。
新入生代表の挨拶が終わり、前に出ていた生徒が席に戻れば、進行を務める綾小路が、在校生代表挨拶、と言えば新入生たちは再び背筋を伸ばす。
在校生代表の挨拶は生徒内から選ばれる者もいれば、生徒会役員の誰かがするという決まりがある。
その為新入生は誰がするのかと楽しみにしていた。
壇上の袖から出て来たのは紀野。
彼を見て新入生たちは歓喜の声を上げる。
一瞬で騒がしくなった講堂内を見回して、コホン、と咳払いをすれば練習でもしたのかと思う程ピタリと静かになった。


「新入生の皆さん、入学おめでとうございます」


冷静に無表情で手に持つ文面を読み上げる紀野に一部の新入生たちは熱の籠った溜め息を溢す。
他の学校だと異様な、でもこの学園ではよくある当たり前なその光景が静かな空間に広がった。




入学式全体の進行が終わり、閉会の言葉を響かせホッ、と一息ついた。
休憩を挟み、次は新役員の紹介に移り変わる。
生徒会役員と風紀委員会の一部のメンバーは全員新入生の前に、真ん中に役員トップを置いて並ぶ。
まず始めに風紀委員会の役員紹介。
端から順に自己紹介をして、風紀副委員長が挨拶し、そして風紀委員長の巽が最後に挨拶をする。
挨拶の間、新入生はずっと黄色い声や雄叫びを上げていた。
巽の挨拶の後、風紀委員会の顧問が簡単に挨拶をして、生徒会役員の挨拶に入る。


2015/4/15.



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あきゅろす。
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