『小虎の恋模様』 9 未経験でも三ヶ月位は補佐として生徒会室に通って指導するから大丈夫だよ、と説得する副会長さん。 周りの人たちの言葉がぐるぐる頭を巡る。 どうしよう、どうしよう……。なかなか頷かないボクに生徒会室は重たい空気に包まれる。 絶対に変更される事のない決定された案をなかった事にも出来る訳がない。 受け入れるしかないのだ。 会計職は目立たないと先輩は言った。 人の前に立つ訳ではないなら、もしかしたら大丈夫かもしれない。 てか頭悪いのに会計って良いのかな……いや、何も暗算を求められてる訳じゃないんだ。 電卓使うだろう……そうだよね。 責任はかかるけど、間違えないように慎重にやれば良いんだよね? …………………よしっ。 「あ、あああのっ!!」 突然の大声に皆びっくりしてしまい、慌てて謝り、奥にいる会長さんに向かって姿勢を正す。 「あのっ!!我が儘言ってすみません。あの、あの……め、目立たないなら、や、りま……す……」 語尾が段々小さくなりながらも頑張ってみる事を伝えれば、ホッ、と息吐いた音が聞こえた。 「役職は変わってもわからない事があれば気軽に聞いてくださいね」 「あ、……はい」 会計さんが良く言ったと褒めてくれたが、恐らくボクの表情は青いままだろう。 決めたからには頑張ろう……そう改めて決心していれば隣から、あの、と紀野君が挙手をする。 今度はなんだ?、と先輩たちとボクらは紀野君に視線を投げ掛ける。 「オレ"支えられる"よりも"支えたい"派なんです」 唐突になんの脈略もない事を話す紀野君に誰もが目を点にする。 「どういう意味だ?」 「はい。なので―――……」 その後、紀野君の提案を聞いたボクたちは驚きのあまり非難の声を上げるが、更に言いくるめられ、流れ流れの勢いで全員その提案に頷いていた。 ボクも最終的に頷いたが、同時に悲鳴も上げたのだった。 2015/4/7. [*前へ] [戻る] |