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『小虎の恋模様』
7


指定された日、部屋を出る前に同室者に、生きて帰ってこいよ、と肩に手を置かれ見送られた。
……やっぱりそうだよね、ボクが生徒会室に呼ばれる理由なんて、何か仕出かして怒られる以外ないよね……!!
全く身に覚えないけど、知らぬ内にってある事だし、許されるまで精一杯謝りまくろう、そうしよう。





重い足取りで生徒会室の前までゆっくり向かう。
時間指定されているから、ゆっくりしていれば遅刻してしまうが気持ちが追い付かない。
まだ冬休み中だから校舎に入っても誰ともすれ違わなかった。
因みに校舎に入る為、制服を着ている。
ブレザーは羽織らずセーターのみで来たから外も廊下も寒い。
さっさと謝って早く寮に戻ろう……。
そう考えていれば何時の間にか生徒会室に着いた。
時間を確認してみたら集合の十五分も遅刻……いくらなんでもやらかした……。
ゆっくり深呼吸して、意を決してノックをすれば、少し遅れて返事が聞こえた。
来た事もない場所に恐る恐るドアを開けチラリと中を見れば、生徒会役員と思われる人たちと、備え付けのソファーに座る二人の視線を一気に受けた。


………パタン。

静かにドアを閉めた。
ちょっと待とうか。役員の人は机にいた人だと思う。じゃあソファーにいたのは誰だ?え、遅刻したから次の予定の人が来てたとか?
そこまで考えてサァーッ、と血の気が引いた。
どうしようとオロオロしていれば、目の前のドアが開き、顧問の先生に手招きされた。
真っ青なまま生徒会室に入れば、再び集まる視線……避けるように先生の後ろに隠れれば、誰かが舌打ちをする。
……ヒィ!!ごめんなさいっ!!


「……お前ってそーゆうタイプだったか?」

「……?」


若干引きつった様な声音で先生が誰かに言うが、後ろにいるボクには誰に言ったのかはわからなかった。
部屋の奥の方から、コホン、と咳払いをされソロリと覗いて見る。
良く見るとソファーに座るのは紀野君と、話した事はないけど同級生一人が座っていた。


「別に取って食おうって訳じゃねぇから、お前もそこ座れ」


奥に座る生徒会長がソファーを指しながら言う。
怒られるんじゃないのかな?
ビクビクしながらソファーの端っこにサッ、と座る。
一人分の隙間を空けて横に座るのは紀野君でその奥に同級生。
膝の上に置いた手を見続けて、ドキドキしながら話をされるのを待つ。
……なんとなく横から視線を感じる……気がする。


「さて、と。そろった所で早速本題に入ろうか」


そう切り出したのは副会長の先輩だった。
は?、とそのまま声に出ていたらしく、三度目の視線。慌ててなんでもないと謝った。


「なんだ。なんかあんなら言え」

「いや!!あああのっ!!なんでも……」

「言え」

「(ひぇぇ……ッ)……あの……えと……ボ、ボク、怒られる、とかじゃ……?」

「は?」

「す、すすすすみませんッ!!」


生徒会長の威圧感に負けて恐る恐る思っていた事を告げてみれば、少し怒気の含まれた一言で返され、慌てて謝った。
もう嫌だ帰りたい泣きそう……。


「心配しないで?別に怒る為に呼んだ訳じゃないからね」


ニコニコと穏やかに話す副会長を見る。
怒られる訳じゃないなら、じゃあなんで呼ばれたんだろう……。
副会長の方に顔を向けていれば、自然と横にいる紀野君も視界に入る。
紀野君も軽く此方に顔を向けているからふと視線が交わった。
……と、その瞬間クスリと笑われてしまった。
恥ずかしさのあまり顔を掌で覆っていれば、周りからは何故か、おぉ……、と感心したような声が聞こえる。


……え、何……?



2015/4/2.


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