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■短編■
1


―――あぁ、まただ。またオレの好きな子はあいつの横にいる。


そんな光景に見慣れてしまったが、やっぱり気持ち的には納得出来ないし悔しいしでオレは小さく「リア充爆発しろッ」と悪態をつく。
毎回そんな事をしている訳だが、そんな風になったのは大学生になってからだ。
現在オレは大学に通って三年目となる。
大学に上がった頃は周りに知る人物が殆んどいない真新しい環境にどきどきと胸を高鳴らせた。
日々を過ごす内に友達も増えたり、先輩と親しくしたりと、本当に順調に過ごしてきた。
ただ一つ、順調に行かない事がある。それは恋愛だった。
オレは大学生になってから初めて好きな女の子が出来た。
勿論お近付きになりたくてその子と仲良くした。
ごく自然に友達同士の付き合いで関わって楽しく過ごし、そしていざ告白しようと決意した矢先。
その子は別の誰かの彼女になっていた。
オレが一歩踏み出すのを躊躇って遅れた事による結果だと自分でも理解している。
だから彼女の幸せを優先してオレはその恋をすっぱり諦めた……一ヶ月程引きずったけれど。
それからまたオレは少ししてから新たな恋を見付けた。
最初の子とは少し違うタイプだけれど、いい子な所は同じだった。
今度こそ彼女にすると決意を固めてから親交を深め、頃合いを見て告白したら「最近付き合いだした人がいるの」と断られてしまった。
既に相手がいるのなら仕方がないと肩を落としてその場を去ったが、数時間後にその子と相手の男が一緒にいる所を見た。
幸せそうに笑う彼女を見て涙が出そうになったが、隣にいる男を見て驚愕した。
何故なら隣にいたその男は、オレが最初に好きになった女の子の彼氏だったからだ。
最初の恋から日は経っていたとしても、一ヶ月とちょっとの間はあったぞ?何、あいつ。前の彼女ともう別れて別の彼女作ったの?!それとも二股かけてんの?!なにそれオレへの喧嘩か?!嫌がらせか?!
そうは思ってもそれを聞く勇気がなくて、ただの偶然だろうとその場は落ち着く事にした。



―――が、それが大きな間違いだった。
その後も何度かオレは恋愛を繰り返したが、その度に玉砕。
そしてその度に必ずと言っていい程例の男が関わっているのだ。
毎回オレが好きになる女の子の恋人は毎回同じ男。
大学生になって既に三年、その三年間全てだ。
相手の男は背が高くモデルをやっていても可笑しくない程のルックスの持ち主で、顔もロボットですかと言いたくなる程恐ろしく整っており、誰しもが「彼と恋人になりたい!!」と口にする程女の子の間では大変人気のある奴だ。
そんなイケメンに三年間も邪魔されて、しかも相手をとっかえひっかえ。
付き合う期間もそこまで長くない。


「じゃあ、なんで付き合うんだよチクショー!!」

「お前の気持ちはわかる。わかるが相手が悪い。なんせこの大学の王子様だからな。諦めろ」

「せめてオレが好きになった子以外の子と付き合えよ馬鹿野郎!!選び放題じゃんか!!腹立つ!!」

「それもすっごい偶然だよな。好みのタイプが一緒なんじゃね?仲良くなれるかもよ?」

「なんで三年間ずっとライバルな奴と仲良くしなきゃなんねんだよ!!」

「ライバル視してんのは一方的だけどな」

「チクショー!!」


空は雲一つない見事な青空が広がる昼時。
オレは友人と飯を食べながら愚痴を零している。
うんざりしながらも毎回聞いてくれる友人には本当に感謝している。すまん。
友人の言う通り相手の男、久瀬春樹(クゼ ハルキ)はそのルックスを持ってこの大学で王子様と呼ばれている。
しかも腹の立つ事に王子様は非の打ちどころがない完璧な奴だ。そんな相手だ。オレだってずっと耐えてたさ。我慢してたさ。
でもさ、でもさ……!!


「あいつとっかえひっかえのサイクル早すぎんだろ。最低な男のどこがいいんだか」

「お前だって恋に落ちる頻度は多いだろ。つか、すーぐ次の子見付けるし。惚れっぽいよな、明人は」

「るせー」


確かにオレもこの三年で沢山片想いはしてきた。
あ、因みに明人ってオレの名前ね。佳賀里明人(カガリ アキト)って言います。今更ですね。





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