■短編■
2016/9/6〜【4】
【小虎の恋模様 番外編4】
暫しの沈黙のあと、それを破ったのは巽だった。
「お前ら学校休んでんだから大人しく部屋にいろよ。……つーか、なんで二人してフード被ってんの?」
紀野と巽の一番の疑問を口にすれば、一番触れて欲しくないと願う小虎と草間は、ぎくりと視線を気まずそうに逸らす。
逸らしても向けられる疑問の込められた視線は変わらず、草間がやけくそ気味に呟く。
「あー……っと、あれだ。今から飯食いに行くんだよ。お前らこそ、授業中だろうが」
「役員の特権を利用してお見舞いにね」
「利用……つーか、ただの悪用じゃね?」
「威張るなよ……」と呆れた風に言う草間に「細かい事は気にするな」と紀野はどうって事ない態度で答えた。
エレベーターのドアが閉まる音を聞きつつ、暫し無言になる。
「見舞いに来たのはわかった。でも今は見舞われたくないから、二人は授業に戻ってくんね?」
「なんで?」
「……そ、それは……その……」
どう言っても疑問しか与えられないこの状況で、下手な発言は控えた方が良い。
小虎も草間も、だんまりを決め込む。
そんな二人を見て紀野と巽は、一度視線を合わせてから、先程から気になっていたフードへと手を伸ばした。
その動きが一瞬の出来事で、小虎も草間も反応に遅れ、無情にもフードは呆気なくばさっと外されてしまった。
「「……?!」」
「……は?……え……んん?」
「わぁ、可愛い」
フードに隠されていた耳がぴくりと揺れて、見られてしまった現実に、今度はぺそりと耳が垂れた。
因みに小虎と草間も項垂れた。
「本物か?コレ……」
「……偽物だったら着けねぇよ……」
「あ、ちゃんと尻尾もあるんだね」
「……はわわわっ!!……き、きき紀野君!!恥ずかしいですッ!!」
紀野は小虎の腰に触れて、少しの膨らみを確認するその行いに顔を真っ赤にして慌てて止める小虎達の様子を、どこか遠い目で見守る草間と巽だった。
つづく。
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2016/9/6〜2016/10/4.
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