■短編■
2016/8/6〜【3】
【小虎の恋模様 番外編3】
解決策が見付からないのであれば、とりあえず腹拵えをしようという事になり、小虎はキッチンへ向かい、冷蔵庫を開けた。
「……!?く、草間君どうしよう!!びっくりする程空っぽ!!」
「はぁ?お前昨日の夕飯はどうしてたんだよ?」
「昨日は普通に作ったし、食材だってまだあった筈なのに……」
「うっわ……まじ空っぽ。調味料とかもねぇ。どうなってんだ?」
「わかんない……」
なんというご都合主義。
昨夜まではきっちり入っていた食材はおろか、調味料類から飲み物まで綺麗さっぱり消えてしまった。
「食費がぁ……」と涙目で肩を落とす小虎に、草間は頭を優しく撫でて励ます。
「……うん、まぁ……しかたない。食堂行くか」
「…………うん……」
いまだに空っぽと化した冷蔵庫にへこむ小虎の手を引いてクローゼットへ向かい、適当なパーカーを勝手に取り出し小虎に着せる。
フードも被せ、尻尾も隠した事を確認して草間もフードを被り玄関に向かう。
項垂れる小虎に「朝飯なんにする?」と声をかけながら靴を履き、小虎が靴を履くのを見守る。
「……食費節約の為、お粥」
「いやもうここはやけ食いしようぜ」
「誰かいたらどうしよう?」
「今授業中だし、万が一に誰か残っててもこの時間に食堂来ないんじゃね?」
「それもそっか」
きゅっと改めてフードを深く被り直した小虎を見て、玄関のドアを開けた。
静かな廊下に二人分の足音が響き、二人は他愛もない話をしながらエレベーターまで歩みを進める。
エレベーターの元まで辿り着き、草間がエレベーターを呼ぶ為にボタンを押そうとした時、上りを示すボタンが光を宿していて、階数を見ようと顔を上げた瞬間―――……目の前の扉が開かれた。
「……ッ?!」
「……げっ」
「あれ、賀集?」
「なんで草間が役員フロアに?……つーか、お前ら……何、その格好」
誰ともすれ違わないと思っていた小虎と草間の前に現れたのは、見舞いの為に学生寮に来た紀野と巽だった。
そしてお互いに予期せぬ遭遇だった為に、気まずい空気が四人を包み込んだのだった。
つづく。
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2016/8/6〜2016/9/6.
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