■短編■
2016/4/2〜【10】
【居眠り王子とオレ 10】
緊張で声が震えたけど、国定に好きだと伝えた。
国定は相変わらず驚いていて一言も喋らないから、オレは焦りで続きを口走った。
「お、オレ本当に国定が好きで……!!好きって気付いたの、わりと最近なんだけど、その前から国定と手繋いだりするとどきどきしたり、国定が他の人にはそうでもないのにオレには優しかったり、目を合わせてくれるのが嬉しかったり……あ、でもそれは明美さんにも言える事だけど、あの、えと……」
「うん、わかった。わかったからとりあえず落ち着こう?」
「……はい」
顔に熱が集まるのに気付きながらも国定に対する思いの丈をぶちまけていれば、国定は冷静にオレの事を宥めた。
……恥ずかしくて死にそうだ。
オレ達の間には妙な沈黙が生まれ、お互いにどうしたものかと悩むのが空気で伝わる。
口を開くが、何を言うべきかと思い口を閉ざす。その繰り返しをしていれば、国定が口火を切った。
「オレの事、好きって本当……なんだな」
「……ん」
「マジかー……」
「はぁ」と溜め息を吐きながら手で顔を覆う国定に、結果が見えてしまった。
言わなければ、ずっと友達でいられただろうにと後悔してももう遅い。
だが言った事に対して後悔はない。
これで良いんだとそう心では思うが、涙が滲み視界を揺らしてしまう。
ぐすりと鼻を啜るのと同時に国定が呟いた。
「凄く嬉しい」
「……ん?え?」
「富山がオレを好きとか、信じらんない位嬉しいんだけど」
顔を覆ったまま呟く国定を見れば、隠されていない耳が真っ赤に染まっている事に気付く。
「どういう事だ?」と今度はオレが首を傾げれば、指の隙間から覗かれる国定の目と合った。
「起こして貰うのなんて本当は誰でも良かったんだけど、富山と隣になって、この機会を逃したくないって思って富山にお願いしたの。誰でも良かったけど、やっぱり富山に起こして欲しかったし」
「……やっぱり?」
「オレ、富山と同じクラスになって、富山の人柄に触れて、富山の声を聞いて富山の事好きになった。一緒にいる様になってからますます好きになった。だから富山からの告白が凄く嬉しい」
さっきのお返しだと言わんばかりに放たれる国定の気持ちに今度はオレが真っ赤になった。
つづく
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2016/4/2〜2016/5/4.
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