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■短編■
2016/3/4〜【9】


【居眠り王子とオレ 9】


「……富山?」

「……よぉ」


ある日の放課後。
ここ、屋上にやってきた国定を迎え入れたオレは、フェンスに寄り掛かってた身体を離して国定に向き直した。
この状況を簡単に説明すると、『今日の放課後、屋上に来てください』という内容を、可愛らしい便箋に女子らしい字で書かれた手紙が国定の机の中に忍ばされ、それを読んだ国定が屋上に来たらオレがいたと、そんな感じだ。
因みに手紙を忍ばせたのはオレで、手紙を書いて用意してくれたのは明美さんだ。
オレの字じゃ女子の書く様な字には程遠いからな。
驚いた表情でオレを真っ直ぐ見る国定は、状況を理解したのか、落ち着きを見せながらオレの側まで歩みを進める。


「どうしたの?可愛い便箋まで用意してさ」

「残念ながら手紙を用意したのは明美さんだ」

「あれ、そうなの?明美なんの用だろ……」

「用があるのはオレだ」


そう言えば国定は「そうなのか?」と首を傾げた。
これから行う事を考えると、心臓が早足になってしまい、落ち着きなく背中側で組み合わせた指先をふらふらさせた。


「なんだかこの状況……オレが富山に声かけた時と逆だな」

「そうだな」


確かにあの時はオレの下駄箱に手紙が入っていて、浮かれて屋上へ向かえば、来たのは国定だった。
今回はその逆の事が起きている―――いや、起こしたと言った方が正しい。


「あの時国定はオレに、自分が寝てたら起こして欲しいっていう告白をしてきたよな」

「そうだったな。……それももう残り僅かになっちゃったけど。もしかして、実は内心迷惑してたって事の告白に呼び出されたの?」


顔を歪ませながら言う国定を見て、涙が出そうになった。
それをぐっと堪えて「……違うよ」と首を振った。


「そうじゃない。……でも告白するから呼び出したって所はあってる」


そう言えば国定はまた驚いた様に目を見開き、口を噤む。
その姿に、どきどきと早鐘を打つ心臓を落ち着かせる為に一つ息を吐き、意を決して国定を真っ直ぐに見つめる。


「オレ……オレさ、国定の事が……好きなんだ」


どんな返事がくるかはわからないけど、オレはオレの中にある確かなこの気持ちを、国定に真っ直ぐとぶつけたのだった。



つづく

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2016/3/4〜2016/4/1.




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