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■短編■
2


「あー……でも行かなきゃ失礼だよなぁ……」

「行くんだ」

「行かなかったら悪いじゃん?」

「『奈緒は行かない』って言っといたのに」

「ちょ、燈夜君またですか……」


こいつはなんで勝手に言うかなと溜め息を吐くが今回が初めてではないから理由はわかる。
そういう事を言うって事はつまりアレな訳だから正直嬉しい。
でもやっぱり相手に悪いから一言断りに行く事も、燈夜は知っている。


「あー……、オレ愛されてるなぁ」

「告白してくる奴に?」

「あのね、燈夜君?」


ずいっと燈夜に顔を近付けて隙ありと燈夜が食べているパンにかぶり付く。
「こら」と額を叩かれるが痛くもない優しい力加減にまた嬉しさが増す。


「先輩、後輩問わず人に好かれるのは良い事だと思う」

「オレは困る」

「言っておくけどオレも困ってるからな。燈夜モテすぎて」

「オレは奈緒以外に興味も好意もない」

「……相変わらずの社交辞令っぷりで。でもそれを言うならオレも同じか」


ごくりとかぶり付いて口にしたパンを飲み込んだのを喉の動きで確認した燈夜は、もともと距離が近かったので、なんの予告もなしに触れるだけのキスをしてきた。
小さなリップ音と共に離れる唇が恋しくて、オレも身を乗り出して離れる唇を追いかける。


「燈夜、もう少しモテないようにしてくれない?」

「無理だろ」

「そこをなんとか」

「全校生徒の前で奈緒を犯せば減るかもな」

「……ッ、バッカ!!」


ポカンと少し力を込めて燈夜の頭を殴るが、今のオレは自分でもわかる位顔に熱が集中している為、怒りを露わにしてもきっと無駄だろう。
くすくす笑う燈夜を睨むが、燈夜に至っては気にしていないようだ。


「まぁ、全部断ってるんだからそれで良いだろ」

「そうかもだけどさぁ。見かけるこっちの身にもなってよね」

「嫉妬してくれる奈緒君、かわいいー」

(棒読みかよ……)


まぁ本心なんだろうけどなんて、長年一緒にいたからお互いわかり合っているから気にしないけど。
なんだかんだ言ってもオレは燈夜を信じているし、燈夜もオレを信じてくれている。
だから安心出来る。







……………けど。


「藤崎先輩!!好きです、付き合ってください!!」


昼休みの終了チャイムが鳴ったから教室へ戻ろうと部屋を出た矢先、待ち伏せなのか偶然なのか、見知らぬ後輩が燈夜に叫ぶように言った。
……おいおい、こんな至近距離での告白シーンの目撃は初だぞと少しばかりオレの口元が引き攣る。


……あぁ、やっぱりモテすぎて不安だよ。





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2011/10/27. 当時の掲載日
2015/4/25. 修正リメイク版




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