■短編■
1
オレには小さい頃からの幼馴染みがいる。
小・中・高ととても長い付き合いの、男女両方から大層モテる幼馴染みだ。
そんな幼馴染みを友達以上に見てたのは何時の頃からか。
気付かれないように隠し通し、これから先も長い長い片想いを覚悟して友達でいようとした矢先、あれは中学一年の冬だったか。
大層モテる幼馴染みはオレに告白をしてきた。
勿論、断る理由なんてこれっぽっちもないから二つ返事で応えた。
大層モテる幼馴染みは、大層モテるオレの彼氏様となった。
―――そして現在、オレ達は高校二年生で日々憂鬱な勉学に追われ、それでも男子高校生活を謳歌している。
「……まぁただ一つを除いて」
ぼそりと呟くオレの声は誰に届く訳もなく虚しく風に持っていかれる。
窓の外をじぃっと見ていれば、さっきっから下の方で二人の人物が目に入る。
話し声は聞こえないが、何やら片方が必死に相手に何かを伝えているようで。
嫌だ嫌だと頭を左右に振り、勢いで相手に接近する程必死な彼を宥めるように優しく肩を撫で、引き離す様子に正直オレは見てられない。てか見たくもない。
あー……、イライラする。
ぶつぶつと呟いていれば、下の方では何かあったらしく、必死だった彼は走り去って行った。それを目線で追いかけていれば、ふと携帯が鳴り、耳に当てる。
「なに」
『随分な返事だな』
「気のせいですよ」
『今からそっち行く』
「屋上じゃなくていいの?」
『外寒いからそこでいい』
「じゃあメロンパン」
『はいはい』
短い返事で電話を切り、外を見れば残った人物はオレを見ていた。
まぁ、オレも電話中は横目でそいつを見ていた訳だが。
外の人物は歩き出し、校舎の中に入って行った。
「通算……えーと……兎に角、数えきれない程の告白現場の目撃……」
がっくりと肩を落とす。
勉強は難しかったりするが、日常的には文句のない高校生活ではある。
が、これだけはマジで憂鬱だ。
【大層モテるオレの彼氏様は学年問わず月に七回以上の告白を受けていて、オレはその現場を全て目撃している】
オレのタイミングが悪いのか、そーゆう体質なのか……。
小学校の頃はなかった気がする。
そんな事を考えていれば、がらりとドアが開かれ、その音にびくりと肩を震わせ慌てて振り向けば、そこには袋を提げて教室に入って来る彼氏様の姿が。
因みにここは授業がない限り空いている、所謂空き教室だ。
「……おかえり?」
「何その疑問形」
がさりと袋の中からメロンパンを取り出しオレに渡す彼氏、藤崎 燈夜(フジサキ トウヤ)は何事もなかったように涼しい顔をしていた。
「そういえばさっき」
「んぅ?」
オレは既にメロンパンを頬張っている為、上手く返事が出来ないから燈夜を見つめる。
"さっき"とは一体何時頃のさっきなのだろうか……。
「『松陰 奈緒(マツカゲ ナオ)先輩が好きな友達がいるので放課後会いたい』っていう伝言預かった」
「げっふぉッ!!!!」
さらりと言う燈夜に対してオレは盛大に噎せた。
燈夜は立ち上がり、オレの背中を摩ってくれた。
「え、それさっき下で会ってた子の友達がって事?」
「そう」
「燈夜にではなく……?」
「奈緒が好きなんだってさ」
……なんか最近、オレにまでこーゆうの増えた気がする……。
前に告白された時に言われたんだけど「燈夜と一緒にいると燈夜とのギャップがあっていい」らしい。
正直な話「何が?」って思う。
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