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■短編■
2015/4/2〜


放課後になってボクは必ず図書室に行く。
図書室からはグラウンドが隅までしっかり見渡せるから何時も窓際の、図書室内でも奥の席に座る。
外を見る為にその席を選ぶのだが、本も読まずにただ座っているだけじゃ怪しまれるから、読むふり用の本をてきとうに選んで、てきとうに開いて置いておく。
頬杖ついていかにも「本、読んでますよー」って雰囲気を出して横目で外を見る。
グラウンドでは複数の運動部がそれぞれ青春を謳歌している。
部員の掛け声や女子の応援する声やらが辺りに響いている。
グラウンドの、校舎に近い位置で練習するのは陸上部で、ボクの目的は陸上部の中でも短距離走をする一人の先輩だ。
丁度その先輩の順番に回ってきたらしく、スタートラインに先輩と、もう二人の部員が並ぶ。
スタート合図にコーチが笛を鳴らせば三人は一斉に走り出す。
どきどきしながらそれを見守る。頑張れ、頑張れ先輩……。
心の中で応援していればだんだん差が開き、先輩が一足先にゴールする。
遅れて二人もゴールして、記録していたマネージャーにタイムを聞きに行く。
今日も先輩が一番だった。ボクが走った訳じゃないのに、それが自分の事のように嬉しくてぐっとガッツポーズを取った。
はっとして周りに見られてないかちらりと確認してから拳を下ろした。
先輩はまたスタートに戻るのかと思って外をまた見れば、丁度歩いていた。
歩いていたのに、先輩がふとこっちに顔を向けた。
向いた先が自分のいる方向だからって別に図書室を、ボクを見た訳じゃないのにどきっとして頬に熱が集まった。
目を逸らそうとしたら、先輩がふわりと笑って手を振っていて、それが誰に向けられているのかわからなかったけど、ボクだったら嬉しいなと思って、真っ赤な顔を見られるかもしれない恥ずかしさから顔を背けた。
熱がなかなか落ち着かなくて、本で顔を隠すけど外せなくて困ってしまった。






「……うーん……」

一走り終わって戻ろうとした中、オレはふと校舎の方に目を向けた。
そこには何時も部活中に見かける人物がいて、なんとなく、その子がオレを見ているっていうのを少し前から気付いていた。


「どーした?」

「いや?……あれは気付いてないだろうなって」

「?」


「なんの話だ?」と首を傾げる友達を無視してオレは図書室の隅っこの席に座って外を見ている男の子を見つめる。
……今度空き時間とかに声かけてみようかな?



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名もない先輩(→)←←←後輩のお話でした。
拍手当時は文字数の都合でぎゅうぎゅうでしたが、改行&行間増やしました。

2015/4/2〜2015/5/12


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あきゅろす。
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