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雨桜

「う〜。あ〜」

「………?」

隣りの銀次から不思議な唸り声がして目だけを向けると、車の窓に張り付く姿があった。



「何してんのお前」

「雨が降ってるから……」

外はまるで梅雨のようにザーッと雨が降っている。

銀次の目はまるで降る雨を恨むかのようだ。

「雨がどうかしたのか?」

「桜…せっかく咲き始めたのに、散っちゃう」

残念そうな声に俺はくだらないと鼻で笑った。

「心配すんなよ。こんぐれーの雨大丈夫だろ」

「でも、やだなー」

はぁ…と溜息をつく銀次。
本当に日本人は桜が好きだなと思う。



…俺も日本人だけどよ。



桜ほど、日本人の心を惑わす花はないだろう。

外国の人は桜をあまり好まない人が多いが、日本人にしてはあのぼんやりとやわらかい色が何とも言えないのだ。





銀次もまた、桜に魅了された人間。





そこまで考えて俺は少しイラッときた。

「…?蛮ちゃん?」

気がつけば、俺は銀次を後ろから抱き締めていた。

「なぁ、お前って俺より桜の方が好き?」

「え?何で?」

「好き?」

問答無用で俺は銀次を抱き締める腕に少し力を込める。
それを見た銀次はクスリと笑った。

「桜は見るものだから好き」

「ッ……」

「蛮ちゃんはオレと一緒にいてくれるからもっと好き」

「………」

銀次が顔だけこちらに向ける。
その表情は優しい笑顔。



「ずっとオレと一緒にいてくれる?蛮ちゃん…」

「…当たり前だろ」












俺達の関係は桜ほど儚くは無い









[4/29]メルマガより


あきゅろす。
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