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Start of love
7
尚人は死体のように床に倒れる俺の頭を寝転がりながら蹴った。脳みそが揺れる。
痛い。バイオレンスな友達って怖い。


「やめろよ」

「めそめそうぜぇんだよ。女々しい男だな」

「眠いんだよ」

「その返しの意味わかんねぇよ。殺すぞ」

「昼間から殺人とかマジやめろよ。母ちゃん泣くぞ。朝刊の見出しも『狂気の昼下がり!高校生の心の闇』とかそんなんになりそうだし」

「突っ込むのめんどくせぇ」


団扇が頭に直撃した。痛い。頭に刺さったんだけど。
痛む頭をおさえつつ、頭の横に落ちた団扇を拾いぱたぱたと揺らす。

尚人はまだ不満そうだ。


「なに」

「なに、じゃねぇよ。お前此処最近可笑しいだろ。」

「お菓子良い…」

「ちっげぇよ!明らかにそうやって無意味にボケてんのが変だっつってんだ!つーか何で俺がお前に突っ込んでんだよ、いつもは逆だったろ!」

「しらないし。新しい相方探してM1に出てくれよ。」

「出ねぇよ!」


カルシウム不足な尚人はキレた。キレて近くにあった水色のクッションを投げる。

だから痛い。酷い。

顔面に直撃されたクッションを退かしながら尚人を見遣ると上半身を起こし、ガリガリと頭を掻き乱していた。尚人の痛んだ茶髪が揺れる。


「あー、ムカつく。恋患いな男ってムカつく」


じっとその様子を観察していると、尚人が意味の分からない台詞を吐いた。

苛々とまた俺の頭を蹴る尚人のその言葉は聞き捨てならない。


「誰が誰に」

「お前が誰かに。こないだ、名前は言わなかったけどゲロっただろうが。避けられてすげぇ嫌な気分になるとか。そいつが気になって眠れねぇとか。気が付けばそいつの事ばっか考えて頭から離れねぇとか。話したいけど拒絶が怖ぇとか。」


言った。確かに言った。尚人が卍固めをかけて脅して来たから、渋々吐いた。

尚人は高梨が嫌いだから名前までは出せなかったけど、俺の気持ちとか今の状況とか洗いざらいぶちまけた気がする。


「けど、恋とかはないし。」

「はぁ?!お前死ねよ。恋以外ねぇだろ」

「死ね死ね言い過ぎだよ馬鹿。……恋なんて」


俺が高梨に?有り得ない。

俺みたいなのが高梨を好きとかおこがまし過ぎる。
不思議と男同士だとかの嫌悪感は全くなかったけど、



…いや、待てよ俺。なんでないんだよ。可笑しいだろ。お前はちゅーとか高梨相手に出来るのか。別に嫌じゃないって言うか顔が熱くなってきたりなんかするな馬鹿。何だよ、ほんと。尚人じゃないけど、死んでくれよ俺。


「………尚人」

「あ?」

「俺を殺してくれ」

「キモい」


確かに、俺、キモい。


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