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Start of love
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あの高梨と。主に高梨を良く思わない人間から冷徹人間等と言われる高梨と。スムーズにでは無いにしろ、こんな雑談染みたものが成り立ってしまうなんて事があって良いんだろうか。

しかも相手は俺だ。
どちらかと言えば地味で目立たない類に位置する俺。

尚人以外は基本的に仲の良い奴もそんなに居ない、人付合いがあまり得意ではない俺と、だ。

何でも無いようなことを高梨と二人、慣れない様子でぽつぽつと話しながら、何だかどうしようもない劣等感と罪悪感に苛まれる。


「……今日は、」

「え?」

「…今日は如何した。バスケで何処か怪我でもしたのか?」

「…あ。…いや、ちょっと貧血で来ただけなんだ。少し休ませて貰おうと思って……」

「そうか」

「う、ん。……高梨、は?」


言ってから、しまった、と思った。

そう言えば高梨は尚人にボールをぶつけられていたのだ。
きっとそのせいで何らかの体調不良に陥ったのだろう。
分かり切ったことを聞いてしまった。

しかも俺はその時分に、高梨に消え失せろと言われてしまっていたのに。
わざわざ思い出させて気まずくなったらどうするんだ。

気が利かない自分が嫌になって、少し俯く。


「………サボり」

「へ、」


すると、また高梨の口から予想だにしなかった台詞が飛び出て来た。
何と言われたのか理解出来ずに顔を上げ高梨を見詰めると、彼は少し困ったように苦々しい顔をしている。


「次の授業は何かわかるか?」

「か、…家庭科。…確か……調理、実習?」


問い掛けに答えながらそれがどうかしたのかと思っていると、表情に出ていたのか高梨が言いにくそうに口を開いた。


「………苦手なんだ」


ふう、と溜息を吐き出し高梨の言葉はやっぱりよくわからない。

だって、苦手、って…高梨が?家庭科を?


「料理するの、嫌いなのか?」

「ああ、食べる専門だな。料理に限らず家庭科自体も…余り得意じゃない」

「裁縫とかも?」

「個人的には消滅して欲しい授業ベスト3に入る。ただ、筆記なら問題はない」


消滅して欲しい授業ベスト3…。

優等生の高梨がそんな事も言うのかと何だか不思議な気持ちになって、少し親近感が湧いた。


「苦手なものあるんだな」

「当たり前だ、欠点の無い人間なんかいないだろ」

「まあ、うん、…でも意外、かもしれない」

「料理や裁縫好きの男なんかそうそう居るものか」

「そうだけどさ、高梨なら何でも出来そうだから」

「偏見だな」


高梨が拗ねたようにぽつり、と呟くものだから思わず笑ってしまう。

何だ、と睨み付けて来る姿も何故か今はあまり怖くなかった。寧ろ、何だか親しみやすい。

不機嫌そうな高梨と上機嫌な俺は、それから家庭科の授業が終わるまで二人してあれやこれやと喋り続けた。


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