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あたためて




ぎゅうう、
擬音に表してみればまさにそんな感じで、洗い物の途中で急に背後から強い力で抱き付かれたジョシュアは体を跳ね上げた。胴体に触れる手が、布越しにもひやりと冷たかったのだ。
「…あの、なんですか」
「寒いんだ」
「俺で暖まらないでくれます?」
抱き付いたグラハムは広い背中に額を擦り付けるように埋める。擦り付けられた当人は聞こえよがしに溜め息を吐いて見せると、洗い物をしていた手をまた動かし始めた。グラハムが動く度にジョシュアは肩をビクビクと揺らした。
彼の手は冷たいだけではなくて脇腹や鎖骨といったところにも触れて擽ったい。時折熱を探るように体を這う手に体を捩りつつも、泡を流す最中の割れ物を気にして手元を疎かにもできないでいた。
大体、なぜ自分がこの人のカイロにならなきゃならんのだと考え出したら少々イライラもしてきた。
そんな心中を知ってか知らずか、肌触りのいいふんわりしたカシミアのセーターが少しくたびれたシャツの上を動いていく。
雪が降るくらいになるといくら北国生まれだといっても寒いものは寒い。水での洗い物は辛いものがあってこの時期は湯を使っている。最後の皿の泡を流し終えて、出していた湯を止めた。手を濡らす雫をタオルで拭き取ると抱き付かれている腕の中で体を無理矢理反転させる。
突然の動作に不思議そうに見上げてきた顔を捕まえ、仕返しの気持ちで頬っぺたを摘まんでやった。きっと睨み付けてくるのだろうと予想しながら。
しかし、視界に飛び込んできたのは意外な表情で、ジョシュアは思わず摘まんだ指の力を抜いてしまった。
とろんと瞼を閉じて心地良さそうにしている顔。湯で暖まった手の温度で暖を取っているようだ。
「……」
「あーっ、もうっ!」

結局その晩は冷たい指先を握りながら眠ったのだった。



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グラハム冷え症だったら可愛い。
ジョシュハムは甘い。











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