[前]夜空舞う、銀の蝶
2
…蝶の表情は
歪んでいた。
本当に、オレの事を心配してくれたらしい。
蝶の瞳は、涙を溜めていて。
…瞳の中に写っているのはオレなのに、違う誰かを
写してるようだった…
「…っお願いだから…もう、こんな事しないで…」
胸倉を掴んでいた手が、声と同じように
震えていた。
蝶は、オレの肩に頭を押し付けた。
「命を、無駄にしないで…!!」
…震えている小さな身体を、片手でゆっくり引き寄せた。
その片手で頭をぽんぽんと、一定のリズムで優しく撫でた。
(蝶…)
蝶は昔から、
゙人の死゙
を、嫌っていた。
もっと前からかもしれないけど…
始まりは、きっと
蝶の母親が、
死んでしまった
あの日からだ…
蝶は…
…いつも何処か遠くを、静かに見ていた。
その背中は
何処か寂しくて。
その背に、何を背をって生きているんだと良く考えた。
(銀の蝶)
(一人で何を抱えているの?)
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