小説
プランツ・ドール3
翌日から元親さんは仕事帰りに明智さんの店へ毎日通うようになりました。
元就に話しかけたり、花束を贈ったり、けれど元就の目は開きません。その事実に毎回肩を落としながら、閉ざされた瞼の下の瞳を早く見たいと元親さんは焦がれるのでした。

ある日、元親さんはネックレスを持ってきました。宝石の着いていないシンプルなものです。
それまでにも元親さんは宝石やアクセサリーを持ってきたことがあります。今日持ってきたものよりずっと煌びやかで高価なもの、でも元就は見向きもしませんでした。それなのに、こんなシンプルなもの。明智さんはちょっと不思議に思いました。もしやお金が尽きたのか、せんな失礼なことも思いました。
そんなことは知らない元親さんは、元就にそっとネックレスを飾ります。手作りなのだ、と話しながら。明智さんは驚きました。元親さんはそんな繊細な作業が出きるように見えなかったのです。元親さんは元就に、元就を想いながら作ったのだと語ります。
その時、元就の体が動きました。驚く元親さんの前で元就が目を開きました。琥珀色のきれいな瞳です。
元就は首に掛かるネックレスを見て、満足したように再び眠りについてしまいました。
あっけにとられる元親さんに、明智さんはネックレスが気に入ったようですね、と言いました。
一瞬とはいえ目を覚ました元就に元親さんは大興奮です。

興奮する元親さんにお茶を勧めながら、明智さんは起用ですねと話しかけます。ご機嫌な元親さんはいつになく饒舌にものを作るのが好きなのだと話します。
山に小屋を建てたこと、家具を作ったこと、料理も好きなのだと話します。時々無性にお菓子が作りたくなること、生クリームたっぷりのケーキ、チョコレート菓子、大福や饅頭などの和菓子、いろんなものを作ると。でも食べてくれる人がいなくて毎回困っていること。そんなことを話しました。
帰り際、元就にささやきました。次は指輪を作ってくるて。

元親さんが店を出た直後、元就が少しだけ目を開けたことに明智さんは気づきませんでした。


次の週のはじめ元親さんは勢い込んで店へやって来ました。約束通り指輪を作ってきたのです。
店にはいると、明智さんが笑っています。元就が待っていますよと。
中で元就が立って元親さんを待っていました。元親さんは驚きながらも喜んで駆け寄り元就を抱きしめます。そしてそっと元就の指に指輪を嵌めます。
元就はそれを見て、にっこりと笑いました。




終わり


元就は指輪とお菓子、どっちに惹かれたのでしょう…?



(初稿 H21.12.1/日記から移動 H22.1.31)


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あきゅろす。
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