小説
プランツ・ドール
ある日の夜のこと。とぼとぼと歩くひとりの男。
とある企業で働く元親さんは連日の残業で疲れ果てていました。しかもその日は帰りの電車で眠ってしまい、降りる駅を寝過ごしてしまったのです。
幸い一駅ですんだのですが、戻ろうにも終電は過ぎてしまい電車では戻れません。仕方なく駅を出てタクシー乗り場へ行きましたが、そこはたくさん人が並んでいました。並ぶのも億劫に感じ、元親さんは歩いて帰ることにしました。
しかし疲れ果てた体。早くも後悔しましたが、タクシーは通りかかりません。結局いつもと違う道をとぼとぼと歩くのです。

ふと、良い香りがしました。何だろうと香りの出所を探すと、一軒のアンティーク調のお店が目に入りました。
紅茶の店だろうか。そう思い近づくと更に香りは強まります。
疲れもピークに達していたので、ちょっと休ませて貰おうと扉に手をかけます。深夜でしたが扉は開いていました。
喜んで店の中へ入った元親さんでしたが、入った瞬間ここが紅茶の店ではなかったことに気がつきました。店の中にはたくさんの美少女…いえ、美少女の姿をした人形があったのです。
人形の店かとぼんやり見ていると、奥から店主がやってきました。
白い長い髪を流した白い服の線の細い男。
その瞬間 元親さんはヤバい店に来たと感じました。

元親さんは慌てて店を出ようとしましたが、店主の明智さんが引き止めます。
間違えたのだと弁明し謝りますが、それなら紅茶を飲んでいけばいいと言います。元親さんは疲れと明智さんの強引さに負けて結局店の中央にあるテーブルに着きました。

明智さんの話では、この店はヤバい店ではなくプランツ・ドールを扱う店なのだそうです。
元親さんも聞いたことはあります。観用少女、ミルクと砂糖菓子と愛情で育つ少女の姿をした植物。

やはり怪しい店じゃないかとひっそりと元親さんは思いました。



続く



(初稿 H21.11.29/日記から移動 H22.1.31)


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