小説
花盛りの乙女たち1
※ 百合親就です。それなりの描写があります。
閲覧には注意してください。





私立戦国女学院の校舎の屋上。
立ち入り禁止のはずのその場所で、授業を行なっていると思わしき時間に寛いでいる生徒たちがいた。


屋上の柵に身体を預け眠たそうに欠伸をしたり、骨休めとばかりに煙草を吸っていたり、真剣にスーパーの安売りのチラシを見ていたりと思い思いに寛いでいる。
「佐助ぇ」
煙草を口から離して政宗がチラシと睨めっこをしている佐助を呆れ顔で見つめる。
「なに、俺様いま忙しいんだけど」
「俺達は dormitory students(寮生)だろ。なんで安売りのチラシなんか見てんだ?」
朝晩の食事は出るのだから必要ないだろ、と言外に込めた言葉だが、佐助は据わった目でチラシの一角に赤丸をつけた。
「旦那の・・・お菓子代・・・馬鹿にならないんだよね」
丸印をつけられたのはお菓子のコーナー。
旦那とは佐助が面倒を見ている彼女らの同級生にして熱血少女の異名を持つ真田幸村のこと。
政宗は納得して頷いた。
「苦労するな、お前も」
幸村は素直で純情で可愛らしい少女なのだがなにしろよく動きよく食べる。
甘味もたいそう好きなので、必ずお菓子を所持しているのだ。そしてそのお菓子を用意しているのが佐助というわけだ。
「全く手の掛かる子で」
幸村のおかんの異名をとる佐助はそれはそれは深いため息をついた。



「そういえばチカちゃん」
「ん?」
「元就さん、また告られてたよ」
それまで会話に参加していなかった元親に、佐助が話を振る。
その内容に元親はふーんと相槌を打つだけ。
「気にならねぇのか、Ice queen のことなのに」
「その呼び方止めろって。元就に知れたら怒られるぞ」
会話に出てきたのは元親と関わりの深い同級生、毛利元就。
端正な容貌を持ちながらあまり表情を変えることなく、冷たい眼差しをしていることから「氷の女王」と影で呼ばれている。
「聞かれるようなへまするかよ。で、気になんねえの?」
「どうせ断ってるだろ」
元就が近隣の学校の生徒から告白されることは今までにもあったが全て一刀両断に断っている。
だからいちいち気に留めたりしない。
「チカちゃん余裕だね」
佐助の冷やかしに、元親はちょっと顔を歪めて笑っただけで応えを返さなかった。



佐助が更に何かを言おうと口を開いたそのとき、屋上の扉がギイッと錆びた音を立てて開いた。
三人とも音に釣られて一斉に視線を向ける。
屋上の入り口に立っていたのは、話題の中心だった毛利元就その人であった。
相変わらずの無表情、と政宗は思った。
だがゆっくりとこちらに向かってくる元就は、手招きする元親を見て少しだけ顔の表情を緩めた。
チカちゃん相手だと表情出すんだよねー、と佐助は感心する。
「ちか、やっぱりここにいた」
屋上の柵に寄りかかってだらしなく座り込んでいる元親の正面まで来ると、腰を下ろし元親にしなだれ掛かった。
一緒にいた政宗や佐助など眼中にはないと言わんばかりに元親だけを目に映し、甘えるように唇を寄せた。
元親も抵抗せず元就と口を触れ合わせる。
それは軽いものではなく、互いの舌を貪る深いものだった。
「ん・・・んぁ・・・ぅん」
元親の身体に両腕を巻きつけて元就は潤んだ眼で元親を見つめ続ける。
やがて唾液の糸を引いて二人の顔が離れると、元就は脱力したように身体を元親に預け、その豊満な胸に顔を埋めた。
元親は元就の髪を手で弄りながらその華奢な身体を擦ってやる。

完全に二人の世界に入っていた。

「またこいつらは!」
「俺達もいるのになぁ」
呆れる二人の目の前で周りがすでに視界に入っていない二人の行為はエスカレートする。
啄ばむように口付けを繰り返し、そのうちに元親の手が元就の制服の胸元を弄りだした。
シャツのボタンを外し胸元を肌蹴させる。そして現れた可愛らしい薄桃色のブラジャーに触れる。
「これ、こないだ買ってやったやつ」
「う・・・うむ、今日、は・・・初めて、ぁ」
「よく似合ってる。可愛い」
気を許しているからか、それとも本当に周りが目に入っていないからなのか、冗談ではすまなくなってきた様子に政宗と佐助は顔を見合わせた。
そして政宗は震える拳をそっと開き、何かを決意したかのように出入り口を見つめた。
「こうなったら・・・幸村を剥いで喘がせるか」
「ちょっと待って、なんでそうなるの!」
大事な娘の危機、と佐助が騒ぐが、元親と元就の空気に当てられた政宗は取り合わず、愛しの幸村をいかに鳴かせるかと考えながら駆け出す。
「悔しかったらお前もかすがを剥いてみろ!」
「そんなことしたら俺様殺されるから、ってそうじゃなくて!」
佐助も慌てて駆け出す。
一応 政宗と幸村の仲を認めてはいるが、どうどうと不純同性交友を宣言されて黙っていられるほど悟ってもいない。
慌ただしく二人は屋上から去り、残されたのは外であるにもかかわらずいちゃつき始めた二人だけ。





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