小説
白磁を染める
中国に明智が攻め入ったと聞き急ぎ船を走らせた。
苦戦を強いられている毛利勢に援軍として参戦し、戦場を走りぬけ毛利を探す。
どこだ、どこにいる!


ようやく見つけたとき毛利は明智と対峙していた。
薄ら笑いを浮かべる明智と、傷だらけで肩で息をしている毛利。その身体から血が溢れているのを見て頭が沸騰しそうになった。
「明智っ!」
怒りに任せ槍を振る。きょとんとこちらを見た明智は次の瞬間には嬉しそうに二つの鎌を振るってきた。
「これはこれは、西海の鬼ではありませんか。あなたも切り刻まれに来たのですか」
楽しそうに鎌を振るい血を求める。
狂った笑いを冷めた気持ちで眺め槍で応戦した。緊迫した空気を鋭い刀が引き裂く。傷だらけの毛利が、それでも必死の形相で二つに割った輪刀を明智に向けて振るう。
「おやおや、少しばかり不利のなようですね」
仕方ありません、と明智はひらりと後方へ舞う。
「待てっ!」
追いかけようと足を踏み出したが、隣にいた毛利ががくりと膝を付いたのでそちらに気をとられ、その間に明智は撤退していた。


足をやられていたらしい毛利に肩を貸し味方の陣へ進む。
かなり辛いのか途切れ途切れに息が漏れる。
「大丈夫か?」
「……大事ない」
そっけなく返され本当に大丈夫かよと肩より下にある顔を伺う。
白い顔は更に白くなっている。頭から流れる血が顔半分を汚し頬も擦れたらしい跡から血が滲んでいる。
綺麗な顔が勿体無い。
それは素直な感想だが、同時にこれだけ綺麗だと傷ついていても綺麗だと思ってしまった。
いつも澄ましている顔が傷つき血に濡れ穢されている。
ぞくり、と背中があわ立つ気がした。
身体を強張らせた自分をいぶかしんだのか毛利が顔を上げた。
不思議そうにこちらを見るどこか無防備な表情に薄暗いものが胸に去来する。


こちらを見つめる綺麗な顔を持ち上げ、頬の傷を舐めた。
「な、にを…?」
「お前は俺のもんなんだ」
戸惑いを見せる瞳を逃さぬよう目を合わせる。
「俺以外の奴に、そんな風に傷つけられるんじゃねえ」
その言葉に、毛利の瞳は揺れ身体が震えるのを感じた。
そしてゆっくりと腕に縋り付いてきた手に心が満たされるのを感じた。



END


戦国親就。ちょこっとSッ気のある元親。
閨ではいつも苛められてる…かも。
名前呼びでないなのは話の雰囲気でそっちのほうが良いかなと思っただけで2人はしっかり身体関係ありの仲です。


[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!