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キリリク
簓様へ(555Hit)


簓様、555Hit&リクエストありがとうございました。

リクエストいただいた樂と櫂斗の過去のお仕事のお話です。

どうにもちょっと長くなりそうなので、分割して更新させていただきます。
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
―――――


「最近は何事もなくて実に平穏だね」

午後のお茶を終えた後、櫂斗が伸びをしながらそう言った。

「依頼もありませんし、今日は早めに店じまいしますか?」

樂がそう問いかけるが、櫂斗はあまり乗り気ではないのか、う〜ん…と首を傾げ、ふと思い付いただろうことを呟いた。

「そういえば、最近町外れに行ってないな」

その言葉に樂もあぁ…と同意を示す。

「確かに、最近この辺りが活動の拠点でしたからね。なら、久々にあそこに行きますか?」

「そうだね。そろそろ顔を出しておかないと彼らに忘れられちゃいそうだ」

そう笑うと、櫂斗は立ち上がって出掛ける準備を始めた。

“あそこ”とは、町外れにある酒場である。そこに集まるのは少し柄のよろしくない者達だが、彼らしか知り得ない情報もあるため櫂斗は忘れられない程度に顔を出して、彼らとの交流を深めることにしていた。

ふと、身支度を終えた櫂斗が樂に話し掛ける。

「そういえば、あそこに初めて行ったのもこれくらいの時期だったね」

「そうでしたね。あの時は本当に大変でした」

樂はその頃のことを回想して渋い顔をする。

その時関わっていた仕事自体は簡単に解決したのだが、その最中に起こった出来事はなかなかに衝撃的なものだったのだ。





それは櫂斗が店を始めた少し後のこと。

最初彼は遠い地域や他国と交易をしている行商人などに、櫂斗独自のツテで得た交渉先の情勢やそちらに向かう道の様子などの情報提供、商売相手の紹介を行うことにより報酬を得ていた。

そして、櫂斗の店の存在が周囲に定着して来た頃、この店を贔屓にしてくれているとある商人から相談を持ちかけられたのだ。

「ウチには何人か住み込みの使用人がいるんだが、その内の一番若い子の様子が最近おかしくてねぇ…。毎晩出掛けて行くんだよ」

その男は腕のいい商人で、商いが手広い分情報も多く買ってくれる上客であった。
また性格も良く、彼の人柄を見込んで取引を行っている相手も少なくないらしい。

「それだけなら若い男だし夜遊びもしたいだろうと普段は気にしないんだけどね。何やら日に日に憔悴していくようでさ、仕事中に小さな失敗を繰り返しているし、ややこしいことにでも巻き込まれているんじゃないかと気になってねぇ…」

その使用人はどうやら町外れにあるあまり上品とは言えない酒場に通っている様子らしい。他の使用人や商人の知り合いが何度もその店に入る姿を見かけているようだ。

自分が彼がそこで何をしているのか調べてみる…そう請け負った櫂斗は、商人が帰った後すぐに酒場に行くと言い出した。

それを聞いた樂は今にも飛び出して行きそうな櫂斗をとりあえず制止する。



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