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キリリク
8


店に帰った後、櫂斗と樂は早速今回の現象について何か資料がないか探し始めた。

しかし、このような事例がそうあるわけがない。時刻も深夜に差し掛かった頃、二人は休憩のため調べ物の手を止めた。

「やっぱりそう簡単に解決方法が見つかるわけないか」

「しかし、このまま生活していくわけにはいきませんからね。どうにかしなければ」

「だよねぇ…」

疲れた様子で机に突っ伏した櫂斗は、そこにポツンと球状のものが置かれているのを見て、その存在を思い出した。

茗の店に通じる裏道で拾った硝子玉である。
帰ってきてすぐ机に置き、そのまま忘れていたのだ。

改めてそれを手に取り、まじまじと眺めてみる。

暗がりの中では赤っぽく見えたが、こうして明るい中で見ると、濃い色合いの桃色をしている。しかし、明かりに透かして眺めると、単色ではなく複雑にいろいろな色素が入り混じってその色を形成しているようだ。

じっと見つめていると、明かりが揺らいでいるからか硝子質の中身がゆらゆらと動いているように感じる。

「不思議な色合いをしていますね」

いつの間にかお茶の準備をしていたらしく、樂がそう声を掛けながら机に湯飲みを置く。

「ありがとう。確かにあまり見ない感じの色だよね。装飾品に使うには大きいし、置物みたいな感じかな。どう思う?」

「そうですね。置物か…家具のような大きなものの飾りとして使うくらいしか用途が思い浮かびませんね」

そう言って樂は櫂斗の手から硝子玉を受け取った。それを手の中で回しながら、表面の手触りなどを確認する。

「表面も滑らかで、完璧な球状に見えますね。重さもありますし、かなり値が張りそうですが…」

その時、何か不思議な気配を感じて樂は反射的に硝子玉を置いて身構えた。

同時に店内の明かりが一斉に消え、周囲が真っ暗になる。

「え?」

何事かと立ち上がった櫂斗の気配がして、樂はそちらに近付いた。

「ロクに見えていないのに不用意に動いたらケガをしますよ。大人しくしていてください」

とりあえず明かりを付けるべきか…そう考えて樂が動こうとした瞬間、コンコンと店の扉を叩く音がした。

時刻は既に日付を越えてしばらく経っている。出歩いている人間などほとんどいないだろう。
加えて唐突に灯りが消えたこともある。怪しくないわけがない。

櫂斗が大人しくしているのを確認し、樂は警戒しつつ扉に向かった。



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あきゅろす。
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