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キリリク
7


時刻としてはもう遅い時間だが、大通りは明かりのついた店が多く活気に溢れている。
女性や子供の姿もまだチラホラあるようだ。

通りを見渡すと、この賑やかさに便乗して儲けようという算段なのか祭りの時に見かけるような屋台が数件出ていた。

櫂斗はふと屋台の看板に目をやると、樂に少し待つように告げてその内の一軒に歩いていった。

何事かと樂が櫂斗の向かった先を見れば、氷菓子の屋台がある。
削った氷に甘い蜜をかけて食べるそれは、単純なものながら櫂斗の好きなものの一つである。

「まったく…」

呆れながらもこのような人ごみの中で櫂斗を放っておくことも出来ず、彼がいる屋台に近付く。

すると、櫂斗は注文ついでに情報収集もするつもりのようで、屋台の主人に親しげに声を掛けていた。

それを見て樂は足を止める。情報収集の邪魔にならないためである。
ただ、彼らが何を話しているのかだけは聞き取れるようにある程度近い位置を選ぶ。

「今日は祭りでもないのに妙に賑わってるね」

「何だ、兄ちゃん知らないのか?どうやら珍しい見せ物が来てるらしいぜ」

「珍しいってどんな物なのかな。やけにご婦人方や子供が多いように見えるけど」

どうやら何も知らない振りをして、最大限の情報を引き出すつもりらしい。
尋ねられた主人も主人で、得意顔でいろいろと語ってくれる。

「俺も詳しくは知らないけど、よく出来た絡繰なんだと。ただ、大事な部品が足りないとかで今日はもうやらないかもしれないって話だ」

「大事な部品…絡繰を動かす部品とか?」

「さあ、どうなんだろうねぇ」

「そうか、ありがとう。これお代ね」

これ以上主人から情報を得られないと判断したのだろう。櫂斗は話を切り上げて樂の方へと戻ってくる。

そして、先ほどよりも屋台に近い位置にいる樂を見て少し驚いた表情を浮かべた。

「その位置で止まってくれてて良かったよ。話がややこしくなるところだった」

その言葉を聞いて樂は首を傾げる。

「ややこしく…ですか」

「そう。あの屋台の主人とは顔見知りなんだ。話好きな人だからきっと情報をくれるだろうと思って近付いたんだよ。そこに俺の姿をした樂が来たら、彼はきっとそちらに話しかけるから」

「なるほど。ただ氷菓子が欲しかっただけではなかったんですね。…その割にはやけに大きい商品を買ってるみたいですが」

一瞬感心しかけた樂だったが、櫂斗の手にある大きな容器の氷菓子にチラリと目を向けてそう付け加えた。

「情報収集も氷菓子も両方が目的だよ。あの屋台の氷は細かくてサラサラしているから、すごく美味しいんだよ」

そう微笑んだ櫂斗はご満悦の様子で氷菓子を口に運んだ。

「歩きながらなんて行儀が悪いですよ。店に帰ってからにして下さい」

自分の容姿で嬉しそうに氷菓子を食べる櫂斗を見ていられず、樂は前に視線を向け、足早に店へ急ぐのだった。



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あきゅろす。
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