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キリリク
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しかし、起こってしまったことは仕方ない。どうにもならないことは置いておいて、とりあえず今回彼らを呼びだした用事を片付けようと、茗は気を取り直した。

しかし、彼らを見てとある懸念が頭をよぎる。

「…私は樂さんに占いをしてもらいたくて呼び出したんだけど、その状態で占いなんて出来るのかしら?至急知りたい内容だから出来ないと困るんだけど…」

それを聞いた櫂斗…いや、樂が苦笑を浮かべる。

「先程この人にも聞かれたんですが、おそらく心配ないでしょう。占いの内容は身体で見るのではなく、目で見たモノを頭の中で捉えたり、その結果が象徴するものから答えを導きだしたりと、器よりも中身で視るものですから。もちろん身体に穢れがあったりすれば影響が出ることもありますが、今回の場合それもありませんし」

「なら良かった。じゃあ早速お願いしたいんだけど…」

その返答にほっとした様子の茗が占って欲しいことを樂に告げている間、手持無沙汰になった櫂斗は何となしに辺りを見回した時、チラリと視界を掠めた紫に目を留めた。

触ってみるとそれはかなりの長さがあるにも関わらずサラサラと指を通り、なかなかに手触りがいい。

ふと、昔彼に何故髪を伸ばすのかと問いかけたことを思い出した。曰く、髪には力が宿るから伸ばす必要があり、手入れも怠れないのだという。

どうせ占いとその解釈には少し時間がかかる。二人の会話に耳を傾けつつもそう思った櫂斗は、自身の身体ではまず体験出来ないであろう髪いじりを決行することに決め、高い位置にある髪紐の結び目をほどきにかかった。

動いても外れることがないようにしっかりと結ばれたそれを外すと、スルリと髪が下りた感触を頭や肩、背中に感じる。それは今まで櫂斗が経験したことのないもので少し面白かった。

とりあえず肩にかかった髪を手に取り、指に絡めたり手櫛を入れたりすることでその長さを確かめてみる。下ろすと腰のあたりまでの長さになるそれは、手入れするのも大変そうだ。

自分がもしここまで髪を伸ばしたとして、きちんと手入れを出来るかどうか分からない。そう思って樂の方にチラリと視線を向ける。

そこには真剣な表情で占い道具である石に向かう自身の顔があり、不思議な気分を味わうことになった。

何とも言えない気持ちになり、視線を樂の前に腰かける茗の方にやると、彼の手元を見つめている茗も真剣な表情だ。至急の呼び出しで占いを頼むのだからそれもそうだろう。

クルクルと髪を指に巻きつけて遊びながらも、手元から視線を上げ、結果を彼女に伝えている樂の言葉に耳を傾ける。しかし、その声音は普段よりも幾分か高く、違和感を拭えない。

しかも、それは本来自分の声だというのだから、ますます現在の状況が不思議に思える。これが他の人の耳で聞いた自分の声なのかとぼんやり頭の隅で考えた。


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