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キリリク
2


目を開いた先、本来ならそこには一緒に倒れた相手の姿があるはずである。
しかし、彼らが目にしたのは鏡でも見ているかのような自分の姿だった。

「え?」

異様な光景に、二人の驚いた声が重なった。しかし、いつまでも倒れてはいられないので、ひとまず互いに姿勢を正す。

立ち上がって改めて相手の姿を見ると、間違いなくそれは自分の姿形をしていた。

加えて言うならば自身の視界に入ってくる、自分の身に付けている衣装や靴は相手の着ていたはずのものである。

思わず互いの姿をまじまじと見つめてしまった二人だが、櫂斗が恐る恐るといった風に口を開く。

「樂、君には俺の姿がどう見える?」

「今日鏡で見た自分の姿に見えます」

「俺も君の姿が今日の自分と全く同じに見える」

自分の見ているものが間違いではないことを確認した櫂斗は、渋い表情を浮かべた。

「こんなことってあるのか」

「実際にこういう状況に陥っているからにはあるんでしょうね。今の今まで想像したことすらありませんでしたが」

櫂斗に言葉を返しつつ、腕を組んで嘆息する仕草は樂の普段の様子と違いないが、姿形は櫂斗なので非常に違和感がある。

どうしたものかと二人の間に沈黙が生まれるが、考えてもどうにかなる問題ではないと気を取り直した樂が櫂斗を促した。

「とりあえず茗さんの店に行きましょう。至急の用事なんでしょう?」

「でも樂、君の体は元は俺のものだろ。そんな状況で占いなんて出来るのか?」

「多少の影響はあるでしょうが、何とかなると思います。占いに必要な要素は精神的なものが多いですし。器が入れ替わっただけのことと思えば何とか…」

自分達が茗の店に向かっている理由を考えて不安を口にする櫂斗だが、樂の言葉を信じることにして頷いた。

「でも、茗がこの状態を知ったら驚くだろうね。いや、案外面白がったりして」

「そうかもしれませんね。あれだけの店を経営してるだけあって、女性ながらに肝が据わっている方ですから」

苦笑を浮かべてそう答える樂に櫂斗も笑いを返す。

そんな会話を交わしているうちに、二人は茗の店に到着した。

さて、とりあえず彼女にはどこから説明するべきか…。
そう思案しつつ、樂の姿をした櫂斗は店の扉に手をかけた。



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