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キリリク
よろずユタカ様へ(666Hit)


いつも素敵なネタを提供いただいてありがとうございます。
頭をぶつけて入れ替わり…鉄板ネタだからこそ考えるのも楽しく、また難しい内容だと思います。さてさて、私が書くとどうなることやら…という感じですが、お楽しみいただければと思います。
ちなみに少し長いので、分割更新です。
―――――



夕暮れ時…繁華街の人通りが多くなってくる時分に櫂斗と樂は茗の店に向かって歩いていた。

「何だか今日は普段よりも人が多いですね」

樂の言う通り、ただでさえ人の多い道が普段よりも多くの人で溢れていた。しかも、いつもに比べると若い女性や子供の数も多いように思える。

樂の声につられるように周囲に目を向けた櫂斗は、納得した風に一人頷いて口を開いた。

「今日は何やら珍しいものが来ているんだよ。いろんな場所を巡っているらしいんだが、ここにも今日来たらしい。ここ何日か話題になっていたから、みんなそれを見に行こうとしているんだろうな。樂、この状態だと茗の店に着くのが遅れてしまいそうだし、裏道を通ろう」

そう言って大通りから細道に入った櫂斗に樂も続く。
ここから繋がる道は少し複雑になっており、明るい内ならまだしも周囲が暗くなり始めたこんな時間はあまり好んで通る者はいない。

しかし、だからこそ便利な面があるため、樂や櫂斗はこの道を重用していた。

「珍しいものが来ているにしても、このような時間に人を集めるのは凄いですね」

チラリと先程の通りに目を向けながら樂はそう返す。樂の方に視線を向けている櫂斗も同じように繁華街を見て樂の言葉に同意した。

「そうだね。聞くところによると、昼は調整があるらしくてお披露目できなかったんだってさ」

「調整…ですか」

櫂斗の言葉に樂が僅かに首を傾げたその時、向かいの角から突然櫂斗の方に飛び出してきた影があった。

自身の後方に目を向けている櫂斗にはそれが見えていないらしい。彼より先にそれに気付いた樂は慌てて櫂斗の腕を取って道の脇に彼を引っ張る。

「危ないですよ」

「え?」

突然のことに櫂斗は姿勢を崩してしまうが、樂に肩を支えられて何とか持ちこたえる。

そんな櫂斗の胸元辺りを掠めて小柄な影が通りすぎて、繁華街に消え行った。

周囲が薄暗い上にその影はよほど急いで駆け抜けていたのか、二人の視界で認識できたのは視界を掠めた桃色だけだった。

呆気にとられてしばらくそちらを眺めていた二人だが、すぐに気を取り直して姿勢を立て直す。

「ありがとう、樂」

「いえ、あの人が走って来たのにもっと早く気付ければ良かったんですが」

「怪我はしなかったから大丈夫だよ。さぁ、行こう」

自分の反応が遅れたことを気にする樂に苦笑しつつ、櫂斗は再び歩き始めた。

そして、櫂斗が樂から2・3歩ほど離れたその瞬間である。櫂斗の靴底が何か球状の物を踏みつけて地面を滑り、グラリと体が傾ぐ。

先程の転倒を回避したことで気を抜いていた樂もそれにすぐに反応が出来ずに、彼を支えようと腕を伸ばすも巻き込まれて姿勢を崩してしまう。

しかも、何が悪かったのか二人は重なるように倒れ、地面に衝突すると同時に互いの頭をぶつけてしまった。

固いもの同士がぶつかる鈍い音が辺りに響き、その痛みに二人は思わず目を閉じる。

そして、少し痛みが引いた後に目を開いた二人が感じたのは、転倒の痛みだけではなく自身の体に対する違和だった。


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