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霧中の桃華
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楽しそうに語る櫂斗を見ながら、樂は櫂斗の本来の立場的に彼に対抗するような姿勢を見せる人間が少ないことを思い出していた。

何せ彼はいいトコのお坊ちゃまなのだ。そのため、彼に面と向かって不信を口にするような者はあまり多くない。だからこそ、彼らの態度は櫂斗にとって好ましいものだったのだろう。

「さて、用心深い双子ちゃんにこれ以上警戒されないよう、今日は近道じゃなくて大通りを通りますか」

いつも使用している近道に通じる角を一瞥して、そういう櫂斗に、樂も頷いて応じる。

「そうした方が賢明でしょうね。昨日の事件も裏道だったそうですし」

そう言ってチラリと後ろにいる双子に目を遣ると、彼らも同じ方向を気にしている様子だ。茗と琉謌によると、この二人はお茶と茶菓子を買いに行く途中だったらしい。そこから考えるに、この大通りから裏道に入って事件と遭遇したのだろう。

そうして琉謌を助けるために二人だけで大人三人に立ち向かったことといい、櫂斗に真っ向から不信をぶつけたことといい、やはり彼らはなかなかに見込みのある少年たちなのかもしれない。

五つ以上も年下の彼らから信じきれないと言われても、「生意気な子供」などと思わずに、そんな風に思ってしまう樂もやはり少し特殊な考え方をしているのかもしれない。


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あきゅろす。
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