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人間は成明だけな夕食を済ませ、居間でくつろいでいた時だった。それまで和やかに話していた神将達の視線が一斉に外に向き、鋭い視線をした朱雀が窓を開けた。

「朱雀、どうかした?」
「消防車の音だ。近付いてくるな」
「火事でしょうか?」

不安そうな表情の天一にすかさず心配ないと告げる朱雀の様子に思わずここは心配ないだろうねと苦笑をもらしていると、テーブルに置いてあったケータイが着信を告げる。

「……電話?」

サブディスプレーに映った名前に首を傾けながらも、とりあえず通話のボタンを押す。

「もしもし」

いつものように声をかけるが、すぐに聞こえてくるはずの返答がない。代わりに聞こえるのは、悲鳴や怒鳴り声。

「おーい颯緋?」

電話にしてはおかしい成明の様子に、勾陣や太裳も問うような視線を向けて来ているが、成明にもわからないので答えようがない。
どうしたものかと雑音の様な喧騒に耳を澄ませていると小さくサイレン音が混じっているのに気づく。

「朱雀、サイレンの音はもう止まった?」
「移動はしていないみたいだな。丁度、颯緋の家の辺りだ」

颯緋、もしくはその周辺で何かあったとしか考えられない。すぐに支度をしようと立ち上がると、当然の様に視界がぐらつく。未だに治まらない頭痛に舌打ちしたい気分になりながら、立ちくらみが引くのを待っていると、勾陣の手が携帯を指さしてきた。

『おーい、成明?』
「……なんか、間抜け声を聞いたら、無性に電話を切りたくなった」
『おまっ、ひど過ぎんだろ』

予想に反してなんともなさそうな声に、安堵と共に僅かな呆れの感情が入り混じる。

「サイレン聞こえるけど、大丈夫なのか?」
『とりあえず、火事じゃないんで大丈夫だ』
「じゃあ、なんでサイレンなんて……」

颯緋の返答が耳に届くよりも速く、勾陣と朱雀が庭に飛び出した。僅かに遅れて成明も異常に気付き、縁側から敷地内を囲う結界へと視線を向ける。

『気をつけろよ、奴の狙いはお前だ!』


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