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オレンジ色を濃くして地の果てに傾いていく太陽が、生徒会室を朱く染める。ペンを走らせるのに合わせて、長い影も同じ動きを見せる。
暫く一人だった部屋に、もう一つ気配が入ってきたが、完全に無視した。

「なーりあきー!」

良く見知った声が己を呼んでいる気がするが、成明はあえてそれも無視する。

「成明くーん」

一度無視した位ではめげないのは、美徳とすべきか、否か。判断に迷う所だ。

「成明?」

書類から一切目を離さずに、黙々と作業を続ける成明に、流石の颯緋も異変を察知したらしい。声色が変わった成明の機嫌を伺う様に、颯緋がわざとらしく肩を揉みはじめる。

「いやぁ、持つべき者は優秀な副会長だな」
「颯緋……」
「なんだ?」
「……わざとらしい」

本来なら、成明が行っている作業は、会長である颯緋の仕事なのだが。さっさと部活に行ってしまった為、半ば押し付けられる形で成明の仕事となったのだ。

「悪かったって」
「俺だって部活あるんだけどな」
「うっ……」

言葉に詰まった颯緋を尻目に、成明は帰り支度を始める。成明が机の上を整理し、私物を鞄に入れて行く様子を見ながら、颯緋はカーテンを閉め戸締まりをしていく。

「今度、埋め合わせる」
「期待してるから」

苦笑混じりに返し、立ち上がった成明だが、一瞬にして視界が白一色に染まった。

「っ成明!?」

力が入らず崩れ落ちていく身体は、床を目前とした所で止まった。
徐々に戻っていく感覚に、深く息を吐く。

「大丈夫か?」
「……ただの立ちくらみだ」

ゆっくりと呼吸を繰り返すと、今度はやや慎重に立ち上がる。
心配気な颯緋に片手を上げ、もう大丈夫だとアピールすれば、颯緋も安心した様に息をついた。

「寝不足か?」
「ああ、夢見が悪くてな」

繰り返し見る夢は起きるとあまり覚えていないのだが、良くないものであることは確かだ。

「祖父さんに相談すればいいのに。頑固だな」
「何かあったわけじゃないから。それに、手に負えなくなったら相談するさ」
「あっそ……」

本当に手に負えなくなる事態には遭遇したくないなと思いながら、成明は帰路についた。





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