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感想は一言。

最悪だ。





建物の最奥だと思われる部屋は、部屋と呼ぶには余りにも広すぎた。


室内を照らすのは、鬼火。
それと、天井にまで届くほどに巨大な、赤い光を放つ円柱。


中央に陣取るのは、身の丈八尺にも及ぶ鬼。

『にんげんか』
「……ばけものさ」

自嘲気味に口端を吊り上げ、鬼を隅々まで観察する。
頭部には三本の角。瞳の色彩は人とは逆で、口から覗くのは異様に突き出た牙。
何よりも。

「四本指か」

つまりは多少なりとも知恵の働く鬼ということだ。
普通の鬼でも厄介だというのに。

「あの柱……」

赤い光を放つ柱は、よく見れば円柱型の結界であるようだ。
そこで、先ほどまで感じていた思いが正しい事を実感する。

「なるほど、本当に最悪だな」
『じゃまをしにきたのか』
「体調不良の原因は貴様が魄のみを回収したせいか!」

円柱の中に閉じ込めれているのは無理矢理回収された魄たち。
余程の苦しみなのか、表情は皆が一様に苦悶に染まっている。

「あの虫刺されの跡は、魄を吸い出すものか」
『そうだ。これはおれのえさ。きさま、なかなかいいたましいをしている。きさまももらう』
「やってみなよ」

素早く臨戦体制をとり、鬼の攻撃に備える。
睥睨する鬼の向こう。円柱の内側から自らに向けられた視線に目が止まる。


ーたすけて


真っすぐにこちらを見つめる女性の口が、確かにそう動いた。
それは、ずっと聞こえていた声の主だと断ずるには十分で。

彼女に応える代わりに、力強く地を蹴った。


召喚した神剣を右手に、複数の符を左に。
鬼はこちらが動いたのを見て、こん棒を振り上げている。

視界でそれを捉え、左手を横に薙ぐ。手から離れた符は、描かれた六芒が光を放ち、瞬く間に光の矢へと姿を変じる。

「例え知恵をもつ四本指だろうと、所詮は三角。力の差はあれどやり方さえ考えれば」

若干弱っている己でも勝機はある筈だ。

狙い澄まされたその攻撃は、無防備に近い両の足に当たる。
鬼は均衡を崩して傾いていく。

立て続けに神剣を閃かせ、紫の雷をその身に降らせていく。身を焦がす、灼熱と衝撃をもたらす神の雷。
上手くいけば断末魔と共に、全てが終わる筈だった。


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