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痺れを切らせた頃、ようやく重徳本人が姿を見せた。

「お待たせした」
「いえ……」

重徳が向ける目は、完全に疑惑の目だ。
お前は何だと目が訴えている。

佐竹重徳。権力と地位の意味を履き違えているような人物で、中肉中背でぱっとしない。

つらつらとそんな事を考えているなんて事は、重徳には思いもしないだろう。

「お初に御目文字まかります。晴明様の名代として参りました」
「失礼だが、そなたと晴明との関わりは?」
「………師事させていただいております」

以前、晴明が道長にそんなことを言っていた。ここはそれに従って名乗っておいた方が後々の為にも良い。

「なんだ、弟子の扱いになっていたのか」
『これの身分を聞かれて、晴明が答えたそうだ』
「まぁ、それが賢明か」

事情を知らなかったらしい物の怪に勾陣が説明している。おすわりの姿勢で隣に座る騰蛇は、実はいつもと雰囲気が違う。昌浩がいないだけでこれまで違うのか……。

騰蛇を恐れることのない天武の才だけではなく、昌浩自身の性格がそうさせているのだろう。


いけない、また別な事を考えてしまっている。
重徳の事からなるべく意識を逸らそうとする己を自制して、改めて重徳へ視線を向ける。

「佐竹様。本日はどのようなご用件でお呼びになられたのでしょうか?」
「……まぁ、貴殿でもよいか」

一見丁寧だが、言葉の端々で見下しているのがわかる。

だいたいにして、昭一を追い詰めた奴を助ける筋合いはこっちにはないんだよこのやろう。

とは言えないので、ひたすら礼の形を取ってやり過ごす。

「頼みたいのは他でもない。当家の姫の事だ」




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あきゅろす。
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