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自分から引き受けた仕事でなければ、さっさと放り出して引き返したかもしれない。

「いや、だって、これは……」

すごい偶然と言うべきか。巡り合わせと言うべきか……。

いや待てよ。
屋敷の前に立つまで忘却の彼方に追いやっていた記憶を呼び起こされたから、すごく最悪の方が当てはまるかも。

「……頼まれたのは晴明様と昌浩殿からだから、うん」

心を広く持つんだ自分。
陰陽師ならとか、そういった類ではなく、大人として心をね、広く……。

『どうした?』
「ちょっと、まぁ……。なんと言いますか……」

隠形したままの勾陣の声が、怪訝そうに響く。
そういえば先の件は報告していないのだ。

ちょっと色々あって、力を使って脅しました。

などとはちょっと言えない。
出来れば言いたくない。
だってそう言った時の晴明の顔が目に浮かぶじゃないか。

「この屋敷の人間に知り合いでもいるのか?」
「知り合いというか……、一方的に知ってる感じですかね……」

流石は、騰蛇。鋭い所を突いてくる。

とりあえず後で適当に説明しなければ。
まぁ、聞かれなければ放置したままでもいいや。精神衛生上は放置しておいて欲しい。

だいたい、自分がこの屋敷の人間の為に心を砕く必要性はないのだと、半ば自棄になりながら門を叩いた。



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