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「佐竹様の姫君……ですか………」

そんなもんがいたのか。
最早、敬う気持ちがかけらも無いから、言いたい放題だ。
口には出さないが。

「左様。少し前から体調が思わしくなかったのだが、先日の件で悪化してしまってな」
「先日の件と言いますと?」
「恐ろしい化け物が我が屋敷に現れたのだ。思い出すだけでも恐ろしい」

恐ろしい化け物。
先日。
現れた……。

その三つの言葉に当て嵌まるのはもしかしなくても自分なのでは……。

「陰陽師に頼んで修祓を行わせたが、姫の容態は悪くなるばかりだ」

陰陽師とは誰のことだろうか。重徳に気づかれぬ様に勾陣に視線を向ける。

『晴明ではないな。そんな話は聞いていない』
「俺もだ。どうせ適当な陰陽師にでもやらせたんだろ」

なるほど。
適当な陰陽師だとしても、汚れていない場を修祓するなら簡単だろう。

「では、屋敷の修祓を執り行えばよろしいので?」
「姫の容態もだ。どの医師や薬師、陰陽師に見せても一向に良くならん。まぁ、貴様に見せても変わらんだろうがな」

だから晴明を呼べと言ったのにと呟きながら、重徳は部屋を出て行ってしまった。

「何が『晴明を呼べ』だ。お前なんぞのために晴明が足を運ぶか!」
「まぁ、想像を超えない人物ですしね。それにしても修祓か……」
『どうするんだ?』
「あの人の為に何かするのは嫌ですが、何もしないで帰れば晴明様に迷惑がかかりますし」

とりあえず言われた事を行うとするか……。

「その心構えは中々だな。あの佐竹にも分けてやりたいくらいだ。だいたい、晴明の名代であるこいつを貴様程度だと」

晴明の名前を軽々と出されたからか、遠回しに侮辱されたからか騰蛇の鼻息は荒い。

とりあえず言われた事をやってしまおうと、未だに怒りの覚めやらぬ騰蛇を宥めながら、屋敷の庭に出た。




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