後日談
目の前に置かれた椀に手を伸ばしながら、肺の空気を全て出し切る。
「もう二度と御免だ」
「舞まで披露しておいて何を言う」
晴明に呼ばれて赴いた部屋の中には、先日行動をともにした三神将が控えている。最近は特に雰囲気が砕けて来ているのが、この三人だ。しかし、勾陣と朱雀は何かとこの一件のことでからかって来ているようにしか見えない。
「あれは、時間稼ぎのためであってですね……」
このやり取りも既に何度も交わされている。
「惜しいのぅ。見てみたかったのう」
「晴明様まで。やめてください」
本気で言われている気がするので笑えない。
「それはそうと、例の一件についてだが。姫とその父に依頼してきた男は、左大臣様が処遇を決めたそうじゃ」
「姫と、そのお父君はどうなりましたでしょう?」
「関与していなかった事になっておる。でなければ、お前さんが身体を張った意味がないだろうて」
過日に姫が行ったことはここにいる者しか知らない。
晴明は自分の意を汲んでくれ、姫の事を道長には言わなかったのだ。
「ありがとうございます」
「さて、なんのことかの」
持った扇で顔を隠しながら飄々と嘯く姿は、昌浩の言う通りたぬきなのだ。
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